「量子コンピューター」「核融合」「海底都市」...30年後の技術を写真・イラストで想像してみる
科学技術の進展は人類の発展に大きな影響を与えてきた。政府の2021年度からの5カ年計画「第6期科学技術基本計画」の策定に向け、文部科学省科学技術・学術政策研究所は、将来に実現する可能性がある科学技術のトピックに関し調査した。量子コンピューターの実現や海洋都市の実現など30年以降に多くの技術が社会実装されるとしている。未来の世界はどうなっているのだろうか。(文・冨井哲雄)
月や火星に基地を作り居住するイメージ(Team SEArch+/Apis Cor提供)。月や火星で人が生活を営み、さらに遠い遠い宇宙への中継拠点となる
海底に向けて作った螺旋状の構造物のイメージ(清水建設HPより)。海洋都市が建設されるかもしれない
核融合炉実現に役立つ実験装置「大型ヘリカル装置」のプラズマ真空容器の内部(核融合科学研究所提供)。次世代エネルギー源として期待される核融合発電の実現が期待される
空飛ぶ車の試作機(NEC提供)。将来は空飛ぶ車が都市部を飛び人を運ぶ
量子チップ「シカモア」(米グーグル提供)。量子コンピューターの実現につながる
量子コンピューター、新型コロナ解析に投入の動き
世界的な混乱を巻き起こしている新型コロナウイルス感染症に対して、スーパーコンピューターによる研究支援プロジェクトの立ち上げが国内外で相次いでいる。膨大な計算パワーと人類の英知を結集し、感染抑止や治療薬の開発促進に向けた貢献に期待したい。(文・斉藤実)
すでに新型コロナ治療のために、インフルエンザ治療薬「アビガン」を用いた臨床試験なども始まり、効果や安全性の確認が急がれている。
スパコンの活用はこうした医療・創薬の研究活動を支援することにある。米エネルギー省はIBM製のスパコン「サミット」を用いて、新型コロナの感染に影響を及ぼす化合物のモデルを作り、宿主細胞に取り付いて感染する能力を弱める薬剤や天然化合物の発見で成果を出している。
スパコンのシミュレーション機能により、膨大なデータから治療に有益な薬剤や化合物などの候補を選別することで、開発時間の短縮化ができる。こうした活動を促進するため、米国では主要な国立研究機関とIBM、グーグル、マイクロソフトなどの大手IT企業が協力し、コンソーシアムを立ち上げた。
国内では理化学研究所が創薬専用スパコンを用いて、新型コロナの原因ウイルスの構造動態をシミュレーションし、生データを世界の創薬研究者に自由に利用してもらうように公開した。
デンソーは、カナダのDウエーブ・システムズが新型コロナ対策の支援で打ち出した「量子コンピューターの無償提供プロジェクト」への参画を決め、技術支援に名乗りを上げた。スパコンに続き、量子コンピューターの投入も始まり、サイバー空間でも新型コロナとの戦いが本格化する。国境を越えて連携の輪を広げてほしい。