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ナブテスコ、100億円新工場の勝算は

ボーイング一辺倒戦略、「ニッチトップ」めざす
ナブテスコ、100億円新工場の勝算は

EHSVのイメージ(2013年10月29日付日刊工業新聞から)

 【名古屋】ナブテスコは岐阜県垂井町に航空機部品の新工場を建設する方針を固めた。投資額は約100億円。2016年秋に稼働し、国産小型旅客機「MRJ」や米ボーイングの次世代旅客機向けに飛行姿勢制御システムの部品を生産する。受注増への対応に加えて、一部の部品を内製化し、事業拡大につなげる狙い。世界的な航空市場の拡大で、関連メーカーの積極的な設備投資が続いている。

 航空宇宙部門の主力である岐阜工場(岐阜県垂井町)に複数の工場棟を新設する。飛行制御システムの基幹部品である電気油圧サーボバルブ(EHSV)の生産ラインを整備するほか、表面処理工場も新たに設置する。アクチュエーターの工場新設も検討している。
 ナブテスコは13年にボーイングの次世代小型旅客機「737MAX」、15年3月には同大型機「777X」の部品を受注。737MAXは月産60機、777Xも月産8・3機ペースで量産される見通しで、受注量の拡大に設備増強で対応する。08年に受注したMRJ向けの部品も新工場で製造する考え。
 従来、EHSVは米国メーカーから購入してきたが、ボーイングから技術力などを評価され、内製化にこぎつけた。新工場は「EHSVの準専用ラインにする」(ナブテスコ関係者)方針だ。

 ナブテスコは米ワシントン州にも工場を持ち、中大型機「787」向けの高電圧配電装置などを生産する。ただ、今後は、国内を中心にサプライヤーを含む生産体制を強化。国内サプライヤーへの生産委託も加速したい考えだ。

20年後見据え、ボーイング向け集中


 ナブテスコが総額100億円規模を投じて主力の岐阜工場の増強に踏み切る背景には、民間機市場の拡大によって世界的に受注競争が激化していることがある。同社の長田信隆専務執行役員は、「20年後の商戦を見据えて業界全体が動いている」と明かす。

 世界には、米ボーイングや欧エアバスといった航空機メーカーにいくつもの基幹部品を供給する「スーパーティア1」と呼ばれる航空部品専門企業が数社ある。これらの会社は航空機の「心臓」とも例えられるシステム部分を牛耳っており、ボーイングやエアバスに対しても価格や納期の面で強い交渉力を持っている。

 対するナブテスコ。連結売上高に占める航空機関連の割合は1割程度と決して大きくない。長田専務は「我々のような"弱小"メーカーが世界と戦うためには、強みを持つ製品に特化し、それを徹底的に磨いていくしかない。顧客もボーイングに絞っている」と語る。

 "弱小"とはいささか謙虚にも聞こえるが、グローバル市場で勝ち残るため、自社の体力に見合った「ニッチトップ」戦略を追求する構え。国内企業向けではMRJや防衛省向け部品を供給するが、当面の間、エアバスやボンバルディアといった他の海外メーカー向けの受注からは距離を置く。

 新工場の稼働で、航空宇宙関連の売上高を2020年代初頭に現在比1・5倍の300億円規模に引き上げる目標だ。
日刊工業新聞 09月29日付記事に大幅加筆
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
制御装置大手のナブテスコが、航空宇宙関連で総額100億円の大型投資を決断しました。今回の記事ではその背景と同社の戦略に簡単に触れました。 ちなみに、航空機産業は5年後とか10年後の生産計画がある程度見通しやすいことも、各社が大型投資に動ける理由のひとつです。 「先が見通しやすい」ので、設備投資しやすいのです。

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