アルミ部品の表面処理、コスト半減できるスゴい技術
八幡ねじ(愛知県北名古屋市、鈴木則之社長、0568・22・2629)は芝浦工業大学と共同で、アルミニウム部品の耐食性を高める表面処理について、一般的なアルマイト処理(陽極酸化処理)と同等の耐食性を確保しつつ、コストを最大50%低減できる技術を開発した。オートクレーブを使い高温・高圧下で水蒸気にさらし、水酸化物の被膜を形成させる。同社は自動車用など各種ネジが主力。2年後の量産化を目指す。
研究段階ではオートクレーブに100個のネジを投入し、200度C、2メガ―3メガパスカルの環境下で水蒸気に6時間さらした。細部に行き渡る水蒸気中の水酸基と基材のアルミが化学反応し、水酸化酸化アルミニウムを主成分とする厚さ5マイクロメートル(マイクロは100万分の1)程度の被膜がアルミ表面に形成される。薬剤は使用しない。
耐食性を評価するキャス試験などでアルマイト処理と同等の性能があることを確認した。アルマイト処理は複雑形状部分に欠陥ができやすく、そこを起点に腐食することが多いが、新技術は複雑形状部分やネジ山頂部にも均一な膜を形成する。さらに高温環境下にさらすことで熱処理と同じ効果が生まれ強度が高まる利点もある。
アルマイト処理は強酸性の電解液につけ、電気分解することで酸化被膜を形成させる。ネジなど小物部品を治具につるす作業に手間がかかるほか、熱処理を別工程で行う必要がある。生産性に課題があった上、廃液処理も必要。新技術は1プロセスのみで完結し、生産性が大幅に高まる。
今後、量産化に向け化学反応速度を上げるための条件追求などを進める。まずは自社での量産化を目指すが、ネジ以外のさまざまなアルミ部品にも適応可能なため、他社への技術供与も検討する。
日刊工業新聞2020年4月17日