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NTT・ソニー・インテル主導の次世代光通信基盤、「IOWN構想」実現への道筋

NTT・ソニー・インテル主導の次世代光通信基盤、「IOWN構想」実現への道筋

NTTが開発した「全光スイッチ」のイメージ。情報通信インフラにおけるエネルギー効率の飛躍的向上に貢献する(NTT提供)

次世代光通信基盤の構想「IOWN(アイオン)」の実現に向けた動きが本格化してきた。NTTとソニー、米インテルが米国で設立したIOWNグローバルフォーラム(GF)は16日、富士通やNECといった6社が新規参加したと発表。今後の目標などに言及する白書も公開した。これに呼応する形でNTTは同日、技術開発のロードマップ(工程表)を示した。通信技術を着実に進化させて社会課題の解決に貢献していけるかが問われる。(取材・斎藤弘和)

IOWNは、通信ネットワークから端末まで光を使うことで膨大なデータを迅速に処理する構想だ。NTTとソニー、米インテルが2019年10月にIOWNGFの設立計画を発表。20年1月、米国でIOWNGFの法人登録がなされた。

今般、IOWNGFのスポンサー会員として台湾の中華電信、米シエナ、富士通、米マイクロソフト、NECが加入。一般会員として三菱ケミカルホールディングスが加わった。スポンサー会員は運営委員会に参加するなどしてGFの運営に関与できる。

IOWNGFは、IOWNの目指す世界や、今後取り組む技術領域に言及した白書も公表した。NTTはこれを踏まえ、技術開発の工程表を示した。21年から23年に、四つの領域で「リファレンス方式」をつくる計画だ。リファレンス方式は技術開発のベースとなる参照モデルのことで、技術者たちはこれを共有しつつ技術の改善に取り組む。

4領域の内訳は大容量低遅延データ通信方式や、情報通信インフラにおけるエネルギー効率の飛躍的向上など。中でも注目株は、データ交換・共有インフラの「コグニティブファウンデーション(CF)データハブ」だ。ネットワークに接続しているセンサーや人工知能(AI)分析機器(ノード)間の大容量データの交換・共有を、低遅延かつ効率的に実現できるとの期待がある。

NTTの川島正久ソフトウェアイノベーションセンタ所長は、既存のサービスを組み合わせて新しい機能を提供するマッシュアップの考え方がAI開発でも広がると予測する。「いろいろなAIの共通API(応用プログラムインターフェース)を呼び出すときに時間がかかってはだめだ」と考えており、CFデータハブがあることでAI開発の促進につながりうるとみている。

もともとIOWN構想の目的は、社会のスマート化や持続的な発展への貢献にある。足元では新型コロナウイルス感染拡大の影響でテレワーク活用が進み、通信網の重要性が再認識された。IOWNGFは技術開発を青写真通りに進め、通信量の増加をはじめとする中長期の課題に対応していけるか。今後の参加企業の拡大状況も含めて注目が集まる。

日刊工業新聞2020年4月17日

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