福島で全面開所、世界最大級「ロボット研究・開発拠点」の全貌
世界最大級のロボット研究・開発拠点となる福島ロボットテストフィールド(福島県南相馬市、浪江町)が全面開所した。計21施設で陸・海・空のさまざまなロボットを開発・実証する拠点となる。中心となる南相馬市の拠点には7月までに22の企業・大学が研究開発オフィスを構える。あらゆるロボットを実証するナショナルセンターとしての役割も担う。(取材=いわき・駒橋徐)
【4エリアに配置】
福島ロボットテストフィールドは50ヘクタールの広大な用地に建設した。隣接する20ヘクタールには南相馬市が復興工業団地としてロボット産業などの誘致を進めている。約13キロメートル離れた浪江町には滑走路と格納庫を設置。物流、インフラ、災害などで実用化する無人航空機や災害対応ロボット、水中探査ロボットなどの開発で実証と性能評価、操縦訓練を行える。
3月末に風洞実験棟や屋内水槽、試験用橋梁などが整い、全21施設が完成した。滑走路、緩衝ネット付き飛行場、市街フィールド、トンネル、試験用プラントなどを「無人航空機」「開発」「水中・水上」「インフラ災害対応」の4エリアに配置する。
【地元産業支援】
すでに運用中の滑走路が多く使われるなど施設の活用件数は167件。今後は橋梁、トンネル、市街地フィールドの利用が増えそうだ。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、事業者のシステムを統合した飛行ロボット(ドローン)の運航管理システムの構築を進める。
研究棟に企業16社、大学、研究機関が入居し、新たに7月までに6者が入る。テトラ・アビエーション(東京都文京区)、SkyDrive(同新宿区)、会津大学などが研究拠点とし、復興工業団地にロボット工場を建設するロボコム・アンド・エフエイコム(同港区)、テラ・ラボ(愛知県春日井市)も入る。
今後は進出企業などが地元の産業と一体となって同フィールドを活用することに期待が高まる。地元産業の技術力向上を支援するため、研究機関の福島県ハイテクプラザ南相馬技術支援センターが同フィールド内に開所。金属積層機能付き5軸マシニングセンターや、デジタル無線通信が評価できる電波暗室など最先端試験設備を設置する。
【取得データ活用】
人工知能(AI)、IoT(モノのインターネット)の実証拠点として、地元企業によるAI・IoT活用の支援も実施する。「地元企業が先端評価装置を利用し、21年度には県外ロボット企業とも連携する。ロボット産業が育ってほしい」(南相馬技術支援センターの伊藤嘉亮所長)と期待を込める。
ドローンのガイドライン策定を手がける日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は、同フィールドの5カ所でドローンの飛行を通したインフラ点検、プラント点検でのドローン利用法のガイドラインを4月にまとめる。同ガイドラインに沿って国土交通省、経済産業省、消防庁がドローンの飛行を包括的に取りまとめる。
ドローン運用で国レベルのガイドラインが求められる中で、同フィールドでは研究開発から運用に至るまでの国際的なデータ取得が可能なナショナルセンターとしての役割も求められそうだ。