高度専門人材に高い報酬、りそなが人事制度改革
りそなホールディングス(HD)の南昌宏次期社長は日刊工業新聞などの取材に応じ、2021年度に「複線型人事制度」を始める計画を示した。ゼネラリスト育成を主眼とした従来の制度を改め、特定分野の専門家も高く評価される風土をつくる。また20年4月には、新規事業や業務改革を担う「クロス・ファンクショナル・チーム(CFT)」を立ち上げる。一連の施策で事業環境の変化に対応できる多様性のある組織づくりを急ぐ。
複線型人事制度は20年度に社員への周知を行い、21年度に正式導入。従来は三つに大別していたキャリアパスを20に増やす。新たなキャリアパスとしては「データサイエンス」や「コンサルティング営業」などを設ける。「今までは支店長(の座)をめがけて皆がゼネラリスト型で頑張ってきた」(南氏)傾向があった。新制度の下では高度IT人材のような専門家に従来よりも高い報酬を与える。
CFTは20年4月に設置する。社内公募も活用し、7月ごろには20―30人程度の陣容で本格稼働する見通し。新規ビジネス創出や、「銀行の基盤構造を変える」(同)ことを担う。例えば、融資の事務のプロセスを構造的に見直すことなどを想定している。
りそなHDは、20―22年度を対象とする次期中期経営計画で既存事業の強化や新事業の創造を掲げる見込み。これらを実現できる人材の育成を加速する。
インタビュー/りそなホールディングス次期社長・南昌宏氏 次期中計、人材と技術融合
りそなHDの南次期社長に今後の戦略などについて聞いた。(取材・斎藤弘和)
―次期中計の方向性は。
「二つある。一つは既存ビジネスの深掘りと強化。りそなグループの強みを再認識し、そこを出発点に考えたい。リテール顧客基盤の質量とフルラインで持っている高度な信託機能。ここをもう一回かけ合わせることで深い取引を展開できる。二つ目は新ビジネスの創造。お客さまの困り事や社会課題は多種多様だ。ここをゼロベースで考えたときに、どんな解決の方法論があるのかという観点で向き合いたい」
―新たな施策を推進できる人材の育成が重要になりますね。
「仮説を立てるのもデジタルを使いこなすのも人間。人材と技術の“融合”が一つのテーマと思う。対面でお会いするところから得られる良質なデータが営業店に蓄積されている。こういう情報と、高頻度・広範囲で取れるデジタルデータをかけ合わせることに新しい可能性がある」
「我々が持つ商品や知見は大きなものがある。一方、異業種など外の人たちの能力やノウハウと合わさることで、今まで我々だけでは解決しにくかった問題を解決できるのではないか。そういう意味で、いろいろな融合が重要になる。その一番の起点が人材だ」
―新型コロナウイルス感染拡大の影響に苦しんでいる中小企業をどう支援しますか。
「お客さまとしっかり対峙(たいじ)し実情を把握した上で、どういったサポートが良いかを個社別に見いだすことが基本。これを全営業店で愚直にやる。資金繰りの窓口や商品も整備が終わってきており、こういったものを通じて機動的に対応する」