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拡がる日本の「平均寿命」と「健康寿命」の差を考える

地域医療を最適化させることの重要性。中央省庁から各地域の自治体へ役割を移せるか
 厚生労働省が先ごろ発表した「平成26年簡易生命表の概況」によれば、日本人の平均寿命は女性86.83歳、男性80.50歳で、それぞれ世界第1位、第3位。日本は世界トップクラスの長寿国だ。

 これ自体は喜ばしいものの、長生きしても病気や不調と闘う期間が長くなれば、QoL(Quality of Life:生活の質)は大きく損なわれることになる。WHO(世界保健機関)が2000年に「健康寿命」という概念を提唱したことに続き、厚労省も健康寿命を『健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間』と定義づけ、平均寿命と健康寿命の差をできるだけ小さくすることを目標に掲げている。

 しかし、2001年と2010年の各寿命の推移をみると、図1のように男女ともその差(=問題を抱える時間)がむしろ長くなっていることがわかる。日本の高齢者たちは約10年もの長期にわたって介護が必要な状態が続いており、それに付随して介護者の金銭的負担や身体的・精神的負担が生じている現実。

社会にも大きな負担

 平均寿命と健康寿命の差がもたらす負のインパクトは、社会にも大きくのしかかる。厚労省の推計では、社会保障費のうち医療給付費は、2012年度の35.1兆円から、団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)となる2025年には54.0兆円に拡大すると指摘。介護給付金(19.8兆円)と合わせると社会保障給付費全体の49.5%を占め、年金(40.6%)を超える規模になると目されている。

 実際、65歳以上の高齢者の一人当たりの年間国民医療費は65歳未満の約4倍という実態(2012年度)もあり、現役世代の負担を縮小するためにも、健康寿命の延伸は不可欠。病気になってから治すのではなく、病気にならないようにする「未病対策」が、今後ますます重要になる。

地域包括医療の重要性

 政府は、社会保障制度改革の医療・介護分野における柱として、「包括的マネジメント」、とりわけ「地域包括ケアシステムの推進」をうたっている。これは、住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるよう医療・介護・予防・住まい・生活支援を一体的に提供しようとするもの。認知症対策や医療・介護連携、プライマリ・ケア/在宅医療など、高齢者のケアを主眼としたモデルを構築する取り組みだ。

 例えば、GEヘルスケア・ジャパンは、2010年から「Silver to Gold」を戦略に掲げ、超高齢社会特有のヘルスケア課題を解決するために、大きく3つの指針で活動を進めている。そのひとつが、高齢社会に多い疾患にフォーカスし、その早期診断・早期治療を促す疾患領域別のアプローチ。二つ目は、増大する検査ニーズを効率的にこなしたり、画像診断装置の検査台を車いすからでも移動しやすい低いものにしたり、検査時間を短縮するなどで身体の負担を抑える“シルバー向け検査機器”の開発。

 そして最後に、プライマリ・ケアの推進。これは、患者さんにもっとも近い医師が広範な疾病領域を総合的にカバーし、専門性を持つ医師・看護師・保健師・介護士などと連携して、地域コミュニティ住民の健康を継続的にモニターする仕組み。

 “超高齢社会・日本”のなかでも最も高齢化が進行しているのは、若者が都市部へと流れてしまった地方都市。GEヘルスケアは近年、そうした地方自治体との協業で「地域版Silver to Goldモデル」の確立を目指してきた。

 地方自治体の多くが、雇用創出につながる「産業創造」と高齢者ケアを中心とする「医療システムの革新」を重要課題に据えており、医療・介護を通じた経済活性化を志向する自治体が、今後も増えると予想される。

明豊
明豊 Ake Yutaka 執行役員デジタルメディア事業担当 DX統括
まさに米国などが推進する行政が持つデータのオープン化「ガバメント2.0(Gov 2.0)」の文脈。オープンデータの推進で、中央政府の役割も重要だが、カギを握る存在は地方自治体ではないか。自治体では膨大なデータの活用、または一般に広く提供しきれておらず、役所内に眠っているケースが珍しくない。医療はいろいろハードは多いが、最も早く手をつけるべき分野だ。

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