鬼怒川決壊「奇跡の白い家」から見る温暖化対策のこれから

気候変動を抑える「緩和」とともに災害被害を防ぐ「適応」を

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鬼怒川決壊で災害派遣された自衛隊(茨城県常総市大崎町)
 東日本を襲った記録的な豪雨では鬼怒川などの堤防が決壊し、多くの人が命を落とすとともに家屋や農作物を失う被害にあった。

 気象庁によると西側に台風18号から変わった温帯低気圧、東側に台風17号が北上し、積乱雲が帯状に並ぶ線状降水帯の発生が豪雨の原因とみられる。昨年8月には広島で同様の線状降水帯による豪雨が原因の土砂災害で、74人が死亡したのも記憶に新しい。

 最近の“記録的大雨”は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2012年に発表した「気候変動への適応推進に向けた極端現象および災害のリスク管理に関する特別報告書」(SREX)を思わせる。地球温暖化対策として、温室効果ガス排出削減で気候変動を抑える「緩和」と、気候変動による被害を防ぐための「適応」がある。この報告書は地域での適応に軸足を置いたものだ。

 SREXは20世紀末に20年に一度起こった極端に暑い日と強い降雨を地域ごとに予測。極端に暑い日が今世紀末にはほとんどの地域で2年に一度、強い降雨は多くの地域で5―15年に一度の割で起こると予測した。今世紀が始まって15年しかたっていなのに、すでに世紀末の様相を呈しているようだ。これら極端現象による災害リスクはそれが起こり得る場所に家や工場などの資産がある暴露や防護体制が整っていない脆弱(ぜいじゃく)性により大きくなるとしている。

 極端現象による災害リスクの管理は、暴露と脆弱性を切り分けて考える必要があるということだ。狭い日本で、あるいは先祖伝来の土地で、災害リスクがあるからといって住んだり働いたりするなというのは難しい。したがって脆弱性を排除する防護体制を整えるしかないだろう。

 気候変動による極端現象はすでに始まっており、緩和だけでは抑えられないところに来ているのかもしれない。今後のインフラの構築や災害防止対策は気候変動への適応も考慮して行うべきだ。余分に費用がかかるかもしれないが、何十年か先に適応の必要性に迫られてから対策を講じるよりも費用対効果は高いと思われる。

日刊工業新聞2015年09月23日「社説」

COMMENT

9月10日の鬼怒川決壊で流されなかった「奇跡の白い家」がテレビで生中継され話題になった。この家は化学系ハウスメーカーによるもので工場建設で培ったエンジニアリング技術を生かし、綿密な地盤調査を行い強固な鉄骨躯体を受け止める設計のもと杭20本を打ち基礎固めしている。まさしく気候変動による大災害の被害を防ぐのに「適応」した一例である。ロングライフ住宅60年をコンセプトにしたこの住宅は、通常の日本家屋が25~30年の寿命であることを考えると、災害に強く長期使用により結果として省エネ的である。2012年IPCC発表の報告書では地球温暖化対策として、温室効果ガス排出削減で気候変動を抑える「緩和」と、気候変動による被害を防ぐための「適応」がある。ややもすればCO2等排出削減策としての「緩和」にだけ関心を集めがちだが、災害被害を防ぐための「適応」策もまた重要であることを今回の東日本大水害が教えている。

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