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伊丹から韓国にチャーター便。民間委託後の「再国際化」にらむ

自治体レベルで交流促進
伊丹から韓国にチャーター便。民間委託後の「再国際化」にらむ

伊丹空港を出発するアシアナ航空のA321

 大阪国際空港(伊丹空港)から9月20日午前10時20分すぎ、韓国・大邱(テグ)空港へ向けて国際チャーター便が飛び立った。
今回のチャーターは、兵庫県の友好交流合意先である韓国・慶尚南道へ、井戸敏三知事や藤原保幸伊丹市長をはじめとする県と市の訪問団約140人を、日韓国交正常化50周年を機に派遣するもの。機材はアシアナ航空のエアバスA321型機(登録番号HL7763)を使用。機体1機を貸し切り、借り主が費用を全額負担する「オウンユースチャーター」で運航した。

 県や市では国際チャーターの実績を積むことで、関西空港と伊丹の運営権を民間企業に売却する「コンセッション」後の再国際化につなげたい考え。

 伊丹発OZ1139便は大邱へ正午すぎに到着。復路は大邱を22日午後2時30分ごろ出発するOZ1149便で、伊丹へは午後4時ごろ到着を予定している。一行は到着後、釜山に1泊し、21日は釜山商工会議所との意見交換や慶尚南道内の企業などを視察。ホン・ジュンピョ慶尚南道知事を表敬訪問し、交流に向けた協議を行う。

 井戸知事は、訪韓について「日韓政府間の関係が良い状況とは言えない状況だからこそ、地方自治体同士、一般市民同士の交流が果たす役割が大きいのではないか」と述べ、自治体レベルでの交流促進に意欲を示した。

 空港が混雑するシルバーウィークに実施する理由について、井戸知事は「(訪問団の)みんなが休みだから」と述べ、参加者を募りやすい点を挙げた。また、国内の航空会社ではなくアシアナ航空を利用する点について、「高くて割に合わない。相談に乗ってもらったのがアシアナだった」として、国内勢は費用面で選択が難しかったと説明した。

 国際線特別扱いの時代ではない

 伊丹空港の国際線は、関空が開港した1994年から民間機はチャーター便のみ認められている。オウンユースチャーターは、2010年と2011年に中国へ兵庫の観光プロモーション訪問団を派遣して以来、4年ぶり3度目。このほかに2013年に南スーダンへのPKOによる自衛隊派遣が2回、チャーター以外の国際便として2011年に韓国大統領の訪日、2015年に米国大統領夫人の訪日がある。

 伊丹から国際線が運航できない状況について、旧運輸省航空局OBでもある井戸知事は「(国は現状を)東京一極集中と言いながら、空港(の運用条件緩和)については“除く関西”となっている」と指摘。首都圏では羽田空港の再国際化などが進んでいる反面、関西では依然として伊丹からの国際線が認められていない点を疑問視した。

 18日には、関空と伊丹の運営権を民間企業に売却するコンセッションの2次審査書類が、オリックスと仏空港運営会社ヴァンシ・エアポートの企業連合から提出された。井戸知事は、関空と伊丹に神戸を加えた3空港について、「一元的に運営されるべき」と述べ、コンセッションによる民間委託により、運用条件の緩和による、効率的な空港運営に期待感を示した。

 藤原市長は、「伊丹に対するいろいろな利用規制を見直してほしい。安全や環境規制は守らなければならないが、国際線は見直してもらうのが悲願」と訴えた。中国や台湾、韓国といった近距離国際線について、「飛んでいる距離は国内線と変わらない。訪日も増えており、国際線を特別扱いする時代ではないだろう」と述べ、チャーターの実績を積み重ねることで、伊丹の再国際化実現を目指す姿勢を示した。

 また、伊丹ではターミナルの改修計画が進んでいることから、「大阪国際空港なのに、施設は国内専用だ」(藤原市長)として、国際線の運用に不可欠であるCIQ施設(税関・出入国管理・検疫)の整備を求めていく。
吉川忠行
吉川忠行 Yoshikawa Tadayuki Aviation Wire 編集長
連休中の20日、普段は国際線の運航が禁止されている伊丹空港から兵庫県などの訪問団を乗せたアシアナ航空機が韓国・大邱へ向けて出発しました。チャーター便の運航実績を積み重ねることで、関空・伊丹の運営権を民間委託後、伊丹でも国際線を再開したいとの地元自治体の狙いがあります。

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