運行10周年…より抜きの「無人駅」巡る秘境の旅はいかが?
JR東海の豊橋駅(愛知県豊橋市)と辰野駅(長野県辰野町)を結ぶ飯田線で、乗降の少ない無人駅を巡る「飯田線秘境駅号」。駅間を歩くイベント「さわやかウォーキング」にも一工夫。高速道路に付帯する新名所との連携も計画している。(取材=名古屋編集委員・村国哲也)
春と秋に運行
飯田線は天竜川の渓谷に沿い、全長195・7キロメートルを走る。集落に駅をつくった歴史的経緯から、94と駅が多く、無人駅も少なくない。それを逆手にとったのが、「飯田線秘境駅号」だ。飯田駅(長野県飯田市)―豊橋駅間で春と秋に各数本運行し、より抜きの無人駅に停車する。「クールジャパンアワード2019」を受賞し、2019年度に運行10周年を迎えた。
おもてなし会議
発着駅の取り組みは細やかだ。リンゴをモチーフにした真っ赤な屋根がトレードマークの飯田駅では長野県の南信州地域振興局と連携している。さらに19年度は他の飯田線の主要4駅やJR東海の営業部らと「おもてなし会議」も初開催し、秘境駅号についての各駅の企画で交流した。
秘境駅号の運行当日は、地元の人たちが停車駅で地元名産品の販売やリンゴワインの試飲、太鼓披露などで乗客を迎えた。配布グッズにも凝り、飯田駅では飯田線の南信州の駅を紹介する冊子800部も手作り。「目標だったお客さま目線の活動ができた」と飯田駅の大坂勝典駅長は満足げだ。
合格祈願コース
秘境駅号以外では、さわやかウォーキングも重視する。飯田市の鼎(かなえ)駅―桜町駅間の9キロメートル弱は「願いかなえてさくら咲け」という合格祈願コース。19年5月に続き1月も実施した。さらに、19年11月に開通した高速道路に併設して天竜川にかかる歩行者専用の橋「そらさんぽ天龍峡」を渡る同様のイベントも、天竜川駅(浜松市東区)を起点として3月22日に予定している。
大坂駅長は市主催の会議にも参加している。飯田線を生かした飯田駅周辺の活性化も街の人たちと共に思案。「訪日外国人旅行者(インバウンド)を含め、飯田に宿泊してもらう企画も観光協会らと考えたい」と意気込む。