携帯大手に痛打…値引き規制引き金にスマホ販売減速
国内スマートフォンの販売台数が減少している。端末値引きの上限を原則2万円に制限した改正電気通信事業法が2019年10月に施行され、iPhone(アイフォーン)など高機能端末の価格が高騰したためだ。3月に商用化する第5世代通信(5G)対応スマホの普及にも影響しかねないだけに、携帯通信大手は毎月の支払額を抑えた端末購入プログラムの開発に知恵をめぐらせている。(取材=編集委員・水嶋真人)
MM総研(東京都港区)がまとめた2019年の国内スマホ出荷台数は、前年比4・7%減の2969万台と、3年ぶりに3000万台を割り込んだ。米アップルが同8・9%減の1406万台となるなど高価格端末の減少が目立つ。携帯大手3社(MNO)向け出荷台数も同5・5%減の2659万台と、12年以降で最少となった。
改正電気通信事業法施行後の19年10月以降の販売も落ち込んだ。NTTドコモの19年10―12月のスマホ販売台数は前年同期比13・6%減の273万台。KDDIも同10・9%減の170万台だった。高価格端末の大幅な値引きで通信契約を狙う従来の販売手法が姿を消した上、消費税率引き上げの影響も出た。
一方、格安ブランド「ヤフーモバイル」や格安スマホ「LINEモバイル」を手がけるソフトバンクは、同4・7%増の285万台。日常使いなら支障を感じない旧型機種を利用し、月額料金も安い格安スマホ業者が若年層やシルバー層の支持を集めている側面もある。
こうした中、KDDIは24回払いを条件に、購入機種の2年後の買い取り価格を残価として差し引くことで23回までの支払いを低く抑えたスマホ購入プログラム「かえトクプログラム」の提供を今月21日に始める。容量64ギガバイトのアイフォーン11の消費税込みの価格は9万720円だが、同プログラムでは残価を3万6785円に設定し、実質5万3935円で購入できる。この金額を23回で割った2345円が月額支払額となるため、消費者の購入負担を下げられる。
改正法では、通信契約と端末をセットで販売した場合の端末値引きの上限を2万円に制限しているが、自社回線の契約を条件としないことで改正法違反にならないようにした。NTTドコモやソフトバンクも分割払いで購入した端末を返却し、自社プログラムで買い替えることを条件とした購入補助プログラムを持つ。
ただ、総務省は同プログラムが新たな顧客囲い込みにつながりかねないと警戒感を強めている。5G時代を迎える中、購入補助に依存せず、高価格でも消費者にほしいと思わせる魅力的な5G対応サービスの開発が不可欠と言えそうだ。