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トッパン・フォームズが“紙と電子の二刀流”を重視する理由

デジタル時代 総合印刷の進む道(3)トッパン・フォームズ坂田甲一社長インタビュー

―2019年4―9月期は4期ぶりの増収増益でした。

「業務委託(BPO)の大型案件終了で厳しい3年間を過ごしてきたが、その間にしてきた準備が計画達成につながった。消費増税や改元での需要もあったが、堅調な金融機関向けのデータ・プリント・サービス(DPS)やデジタルソリューションの拡販が大きな要因になった」

―今後は携帯電話大手3社が提供する「プラスメッセージ」用サービスの成長にも期待がかかります。

「国内は金融機関の手続きを共通化する基盤『エアポスト』と、メッセージ配信を最適化するサービスが2本柱。このようなリッチコミュニケーションサービス(RCS)の事業はシンガポールでも動いている。これらはいわばDPSの仕組みを電子化したサービス。紙と電子の二刀流ができるトッパン・フォームズの強みが現れるビジネスだ」

―22年3月期までの経営戦略に300億円の投資を予定しています。今後の計画に変更は。

「インドネシア企業の子会社化も含めてこれまでに50億円を投じた。今後も海外案件やITを中心に投資先を積極的かつ慎重に投資先を見極める。ただ、RCMや決済サービスなど成長する事業は事業拡大に合わせて(計画とは別に)適時適切な投資が必要になるだろう。東海地区の製造拠点を集約して新設した袋井工場(静岡県袋井市)も事業投資とは別に約150億円を投じた。今はビジネスフォームの拠点だが、市場縮小に合わせて無線識別(RFID)タグやICのタグを製造する割合を高くしていく」

―デジタル化の進展で必要な人材や能力が変化しています。

「新分野への挑戦にはさまざまな人材が必要。従来は新卒定期採用が中心だったが、中途・経験者の採用拡大や海外IT人材の採用をグループ全体で徐々に進めている」

「設備や制度などを作り込む以上に人の育成が最も大事。特に情報セキュリティーに関する知識は生命線。(紙からデジタルへの)配置転換に伴う再教育も含めて、人材育成の取り組みはこれまで以上に力を入れる」

【記者の目/既存事業の底力侮れない】

紙媒体やカードが完全にデジタル化へ移行するまでのタイムリミットは正確に読めないという。ダイレクトメール(DM)はパーソナライズ化された高付加価値なものを中心に需要が根強く、日本やアジア圏ではカードが底堅い支持を集めており既存事業の底力は侮れない。今後デジタルサービスの比率が高まっていく中で事業価値をどう高めるかが試され続ける。(国広伽奈子)

トッパン・フォームズ社長の坂田甲一氏
日刊工業新聞2020年2月5日

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