日系自動車メーカーの中国工場再開延期へ、沿岸部まで広がれば市場への打撃は甚大に
新型コロナウイルスによる肺炎の感染が中国全土に広がる中、トヨタ自動車は、春節(旧正月)休暇明けの工場稼働再開を当初の2月3―4日から同10日以降に延期することを決めた。日野自動車も延期する。新型肺炎が日系メーカーの生産計画に影響を与え始めた。感染拡大が終息せず消費者が外出を控えれば、販売にも打撃だ。中国の新車市場は2019年末に底打ちしたとみられていたが、冷や水を浴びせられた形だ。
トヨタは中国現地企業と設立した合弁会社「一汽トヨタ」と同「広汽トヨタ」の完成車4工場を天津市、成都市、広州市、長春市に構える。一部地方政府が春節休暇の延長を指示したこと受け、トヨタは休暇明けの工場稼働再開を2月10日以降に遅らせる。日野自動車は上海市が休暇延長を指示したため、同市内のエンジン工場の再開日を従来の同3日から延期する。
ホンダは、新型肺炎が発生した武漢市に3工場を構える。操業再開は2月3日の予定だったが、「延期を含め検討中」(広報担当者)。別の関係者は「3日再開は難しいのではないか」と話す。各社の生産計画への影響は避けられない情勢だ。
中国の新車販売は19年まで2年連続で前年割れ。ただ19年の販売推移をみると5月以降、前年同月比の減少幅は縮小傾向で12月は0・1%減と横ばいに落ち着いた。業界で「新車市場は底打ちした」との見方が広がる中、新型肺炎は販売回復の勢いも削(そ)ぐ方向だ。
重症急性呼吸器症候群(SARS)が発生した03年、中国の新車販売は450万台規模。それが2500万台規模まで拡大した今、新型肺炎が長引けば「打撃はケタ違いになる」と米ゴールドマンサックス証券の湯沢康太マネージング・ディレクターは指摘。トヨタ系部品メーカー関係者も「当時より影響は大きい」と懸念する。遠藤功治SBI証券企業調査部長は「20年の新車販売を100万台規模で減少させる要因になりかねない」とみる。