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国立大の施設整備に地域や企業の寄付が集まり出した理由

新たな連携で新しい価値を生む
国立大の施設整備に地域や企業の寄付が集まり出した理由

宮崎大の「地域デザイン棟」(同大学公式チャンネルより)

国立大学の施設整備を、地域や産業界からの寄付などで賄う事例が出てきている。ソフトの人的交流を発展させて施設設置につなげるものだ。予算不足に悩む地方・中小規模大学にもチャンスがある。財源を多様化する方策として注目したい。

国立大学の建物は運営費交付金とは別に、「施設整備費補助金」で予算が組まれる。国土強靱(きょうじん)化の予算措置などで、ここ数年は一息つくが、補正予算頼みで安定しない悩みがある。

私立大学なら大規模な建物の新設は、学生の志願者増に直結するため、進めやすい。対して国立大では傷みが目立つ建物が少なくない。予算が付き老朽化施設は改修できても、新増設はまず望めない。そんな中、企業や自治体などとの連携による新たな建物が現れている。

宮崎大学は地元の米良電機産業の寄付で「地域デザイン棟」を新設した。県内自治体首長らのトップセミナーや、学生サークル、学外組織の交流イベントなど、利用は活発だ。キャンパスのメーンストリートに置いたためで、大学のシンボルとして浸透しつつあるという。

大阪大学も企業の建物の寄付で、共同研究拠点を整備した。入居企業からの家賃収入という、持続的な財源確保にもつなげている。また学生寮を官民連携事業(PPP)で建てる手法は、費用を後年の家賃収入でカバーできることから、複数の大学が採用している。

東京大学は柏IIキャンパス(千葉県柏市)に、経済産業省の予算で同省所管の産業技術総合研究所の施設を建設。トップクラスの国立大と国立研究開発法人で、人工知能(AI)とモノづくりの共同研究に取り組む。

佐賀大学は佐賀県立有田窯業大学校を統合した。柿右衛門様式で有名な有田焼の伝統を失うことなく施設を改修して移管し、大学の新キャンパスとなった。これらは国や自治体の規制緩和を活用し、大学が工夫をした成果といえるものだ。

予算は厳しくとも知恵と努力で道を切り開く、そんな国立大を応援していきたい。

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