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象印マホービン本社の「まほうびん記念館」、競合他社製品を並べた狙い

象印マホービン本社の「まほうびん記念館」、競合他社製品を並べた狙い

創業100周年記念でリニューアルした際に設けた「まほうびんの森」

象印マホービン本社1階のまほうびん記念館。創業90周年を記念し、2008年6月に開館した。創業100周年を迎えたのを機に18年にリニューアルした。大阪税関によると、魔法瓶の輸出総量、輸出額が占める近畿圏の割合は全国トップ。大阪には同社をはじめ、魔法瓶メーカーが集積する。地場産業の一つとして、地域に根付いてきた。

記念館は「象印」の名を冠していない。全国魔法瓶工業組合に所属する競合他社の製品を自社製品と同列に展示している。その狙いについて、杉山一美館長は「自社のPRではない。公共性、普遍性を意識し、同業界全体の歴史や、真空の仕組みなどの紹介を軸足に据えた」と明かす。

家族連れのほか、小中学生の社会見学やシニア層の団体客などが訪れる。近年ではインバウンド(訪日外国人)の来場も目立ちつつある。来館者数は累計で約1万7000人。口コミでの評判などにより「年々来館者数は増加傾向にある」(杉山館長)という。

同記念館の入り口付近で入館者を出迎えるのは、魔法瓶の原型となった「デュワー瓶」のレプリカ。英国の化学者、ジェームス・デュワーが1892年に開発した。ガラスの真空二重壁の内部に、銀などの金属メッキを施す。すると、鏡のように光ることで、輻(ふく)射(放射)熱を防ぐ。魔法瓶の萌芽(ほうが)を目にできる。

18年のリニューアル時には、「まほうびんの森」を新たに設けた。銀メッキを施す前のガラス魔法瓶を使用した、発光ダイオード(LED)灯が照らす温かみのある空間が特徴だ。色形などが互いに異なる魔法瓶110本を展示。食卓を彩ってきた、花柄やキャラクター柄の魔法瓶をはじめ、有田焼の磁器製ケースに包まれたものや、企業広告をまとった珍しい魔法瓶に至るまで網羅している。「来館者が昔を懐かしみ、感嘆する姿が目立つ」(同)。

19年11月に就任した杉山館長。「新たな企画展の開催や、一層細やかな説明などに力を入れる」と意気込む。

「まほうびんの森」にある魔法瓶構造のランプ

【メモ】▽開館時間=10時―12時、13時―16時、休館日=土日祝日ほか同社の休業日▽入場料=無料、事前予約制▽最寄り駅=地下鉄谷町線・堺筋線「南森町駅」・JR東西線「大阪天満宮駅」下車、徒歩約10分▽住所=大阪市北区天満1の20の5(本社1階)▽電話番号=06・6356・2340

日刊工業新聞2020年1月24日

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