九州の地銀、地域活性化に試行錯誤
厳しさを増す地銀の経営環境。九州・山口における再編は、ふくおかフィナンシャルグループ(FG)への十八銀行の経営統合が完了し、一段落した感がある。一方、地方では少子高齢化や人口減少による疲弊に対する課題意識が強まる。地銀グループ各社は、よりどころであり存在意義とも言える地域の活性化に知恵を絞る。(西部・三苫能徳)
【中小後押し】
「意志のあるお金を地域に呼び込む」と宣言したのは、九州フィナンシャルグループの笠原慶久社長。9日、クラウドファンディング(CF)事業のミュージックセキュリティーズ(MS、東京都千代田区)との共同会社「グローカル・クラウドファンディング」の設立を発表した。
同社はネットを通じて少額資金を集め、地域資源を生かす中小企業を後押しする。これまで融資を受けにくかった事業者にも支援の手を伸ばす。地方から世界へ発信する思いを込めて「グローカル」を冠した。金融機関初というMSとの共同出資で本気度を示す。
【域外地銀と提携】
ふくおかFGは地場産品の商品開発やブランディングによる商社事業で、地域の中小メーカーを底上げする。CF機能も持つ自前の電子商取引(EC)サイトで、販売まで一貫させる仕組みが肝。スマートフォンアプリ事業における域外地銀との提携網も生かす。
山口フィナンシャルグループは人材紹介で首都圏との人の流動性を高める。経営人材に加え、地方に少ないITやマーケティングの人材も副業・兼業に対応することで呼び込もうとしている。
【信頼勝ち取る】
専門人材の育成に力を注ぐのは、西日本フィナンシャルホールディングス。谷川浩道社長は「(顧客から)本物の信頼を勝ち取る運営体制づくりを進めなければ」と経営環境への危機感は強い。傘下の西日本シティ銀行が信託業務に本格参入し、高齢化で高まる相続ニーズなどへの対応を強化した。マイナス金利政策などで本業が苦戦を強いられる中、「地域あってこその地銀」(谷川社長)として、各社とも地域金融の真価が問われている。