スマホカメラに朗報、ガラスの微小レンズを短時間で大量作製できる技術
理化学研究所生命機能科学研究センターの田中陽チームリーダーらは、ガラス製の微小レンズを従来法の10分の1に当たる90分で大量に作製できる技術を開発した。ガラスに微細空洞を形成し、空洞内の気体を熱膨張させる「吹きガラス製法」を使いレンズの機能を持つ「微小ドーム構造」ができる。分析用光学素子などへの応用が期待される。
従来法で1個のレンズを作る時間で、縦8インチ×横8インチ×厚さ100マイクロ―250マイクロメートル(マイクロは100万分の1)のガラスに1000個のレンズを作れる。
研究グループは吹きガラス製法で直径30マイクロ―1ミリメートルのさまざまな種類の微小ドーム構造を作製した。そのまま使うと凹レンズの機能を持ち、対象物が最小0・61倍に縮小するレンズになる。一方、微小ドーム構造に液体を充填すると凸レンズの機能を持ち、対象物が最大1・65倍に拡大することが分かった。酸や有機溶媒中または300度Cでもレンズ機能が保持されることを確認した。
透明な微小ドーム構造は優れたレンズの機能を持ち、スマートフォンのカメラの部品などに応用されている。安価なプラスチックは鋳造法で大量に製造できるが、ガラスよりも耐久性が低く透明性が劣る。そのため、ガラス製レンズの需要が高い。だが、ガラスの微細加工は手間と時間、費用がかかり、大量生産が困難だった。
日刊工業新聞2020年1月13日