五輪イヤー、開催都市「トウキョウ」の成長戦略は万全か
【訪れる人々心地よく】
東京五輪・パラリンピック大会の経済効果は莫大(ばくだい)だ。都の発表では、東京に招致が決まった2013年から大会10年後の30年までの18年間で、全国で約32兆3000億円と試算している。時差出勤や働き方改革、バリアフリー対策などの効果も大会後の大きなレガシー(遺産)として、我々の生活を良い方向へと変えていくと考えられている。【eスポーツ、新たな商機】
五輪・パラリンピックつながりで夢のある話題の一つとして、五輪の競技種目になり得るのか注目される『eスポーツ』。19年10月に茨城国体で初の「全国都道府県対抗eスポーツ選手権2019IBARAKI大会」が開かれ、東京都の成績は205点で第10位となるなど盛り上がりをみせている。【「5G」核に新産業創出】
五輪・パラリンピック大会後、果たして日本の景気はどうなるのか―。景気は後退すると危ぶむ見方もあるが、そうならないための布石として東京都では第5世代通信「5G」の整備を推進する「東京データハイウェー基本戦略」を策定済みだ。インターネットの新技術5Gを早期に社会実装することで便利で心地よい都市空間をつくり出し、新たな産業を生み出し、国際都市間競争に打ち勝つことを視野に入れた意欲的な構想。通信スピードが従来の100倍以上でつながると、これまで不可能だったことが可能になる時代がやってくる。【インタビュー/小池百合子知事「変化はチャンス」】
―五輪イヤーの今年、東京のどんなところを世界に見てもらいたいですか。
「東京は伝統と革新が共存する魅力あふれる都市。伝統を大切に最先端の技術やアニメ、ポップカルチャーなど魅力が豊富にあり、それらを発信していく良いチャンスにしたい。同時に、アピールしたいのは東京の自然だ。ラムサール条約湿地に都では初めて登録された都立葛西海浜公園や島しょ、多摩にもインバウンドの方に来ていただくよう多言語で発信していく」
―具体的には。
「外国人旅行者向けにエンターテインメント情報を発信するポータルサイトを開設した。英語と日本語による多言語対応で、いつどこで、どんな演劇や歌舞伎があり、また体験ができるのかを載せており、切符の予約・決済機能もある。東京に興味のある方に必要な情報をすぐ届けられるようにする」
―5Gを実現した先にある未来とは。
「MaaS(乗り物のサービス化)、自動運転など、いろんな種類が出てきている。交通インフラでは、信号機などが今以上に緻密に連携することで交通の流れがよりスムーズになると期待される。外出困難な高齢者でも買い物ができ、モノが届き、医師の診療が受けられるなど、これまでなかったサービスが当たり前になる。電波の道『東京データハイウェー構想』で都民の生活をより便利に、安心できるまちにしていく」
―長期戦略ビジョンを策定されました。
「経済、テクノロジー、気候変動、人口構造と四つの柱のどれもが歴史的な転換点を迎えている。変化はチャンスで、乗り遅れたら大変な危機をもたらすこともある」
「特に人口問題は、日本全体にとっても大きな課題だ。合計特殊出生率2・07の目標を掲げたのは、人口問題は社会全体の基盤となるもので、少子化に正面から向き合って、みんなで子育てを応援していくことが一番の基本になるからだ。人生100年時代の長寿では学び直しも大きな柱の一つに入れた。そして環境に取り組む『ゼロエミッション東京』も打ち出した。持続可能な成長と成熟、この二つがあいまった東京を目指していきたい」