JR東日本が実現するロボットが活躍する「未来の駅」の全容
近い将来、サービスロボットが活躍する場の一つとして有力なのが駅だ。外国人をはじめ多様な利用客への案内や、清掃・警備の省力化が期待される。JR東日本はオープンイノベーションでロボメーカーに駅構内を実証に提供し、課題を洗い出して開発に反映。メーカーとの二人三脚で「未来の駅」実現を目指す。(取材・小林広幸)
【試行導入】
JR東日本は2020年3月に開業する高輪ゲートウェイ駅(東京都港区)を“新しいことをはじめる場所”と位置付け、サービスロボットを導入する。深沢祐二社長は「近未来の技術を感じてもらえる駅にしたい」と意気込む。19年12月には試行導入するパナソニックらのロボ6台を、営業中のさいたま新都心駅(さいたま市大宮区)でテストした。
メーカーの自律型移動ロボは、必ずしも駅環境に合わせて開発されてはいない。駅構内は点字ブロックが敷かれるなど平らとは言えず、何より人の流動は常に同一の方向でなく混沌(こんとん)としている。
実験にはJR東がフロンティアサービス研究所で内製した「ステーション・サービス・ロボット(SSR)」も実際の駅に初めて登場した。電子看板を背負い、キャンペーンやマナー広告を表示して駅構内を動き回る。SSRは、さまざまな人が行き交う駅空間で、流動を邪魔せずにロボが移動するシステム確立を狙いに開発した。
駅各所に設置した流動を計測するセンサー内蔵ポールの情報、駅構内図や到着列車からの流動などを組み合わせて自律型移動ロボに伝え、雑踏での移動を支援する仕組みだ。
JR東は安全・安心で利便性が高く快適な環境配慮型の駅“スマートステーション”実現に向け、研究開発センター(さいたま市北区)に実際の駅を模した実験棟を設置。駅という特殊な環境に、汎用ロボを迎える技術も同所で生まれた。
【案内AI育成】
首都圏の駅では18年12月から2回にわたり、人工知能(AI)案内ロボの実証実験が行われた。さまざまなロボが駅員に代わって利用客の質問に対応。回答できなかった質問は駅社員が後に正解を教えてAIを“育てる”取り組みだ。
実証の1期目では喧噪(けんそう)の中での音声認識の難しさなど多くの課題が浮き彫りになった。一方、各駅では社員が総出でAI育成に取り組み、実証期間で「小学生が高校生ぐらいに育った」(JR東幹部)。2期目の実証にはインターフェースなど使いやすさ改善や多言語対応、外部データベースとの連携強化など、より実用性を高めて臨んだ。
【五輪が本番】
案内ロボは東京五輪・パラリンピックでの活用が目標だ。ラグビーワールドカップ期間と重なった2期目の実証では、外国人への案内にも一定の成果を得た。満を持して高輪ゲートウェイ駅に試行導入し、本番に備える。
駅で求められるサービスには当面、ロボや機械への置き換えが難しそうなものも多い。反対にロボだからこそ提供できる新サービスもある。ロボ活用には労働力不足対策の側面もあるが、未来の駅は、生産性追求の視点のみでは創造できない。
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