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アルストムの事業買収を承認。GEが描くアライアンス構造とは

 欧州委員会(EC)は9月8日、米ゼネラル・エレクトリック(GE)が提案していたフランス・アルストムの発電・送配電資産の買収取引を承認した。CTスキャナからジェット・エンジン、発電タービンまでさまざまな製品を製造するGE。この1年間は中核事業の強化、ソフトウェアへの投資、IoT(モノのインターネット)機器の接続などに取り組む一方、かつて収益の半分以上を生み出していた金融事業の売却手続きを進めてきた。

 今回、アルストムの発電・送配電設備事業を買収することで、製品ポートフォリオをさらに盤石なものにしようとしている。GEは、アルストムの収益によって2018年までに1株あたりの利益が0.15~0.20ドル増加、インダストリアル事業で生み出される営業利益が2014年の58%から90%以上に増加すると推計している。

 GEがアルストムの資産に対し買収提案を初めて公表したのは2014年4月。それから15カ月間、GEは規制当局から多くの承認を得てきたが、この買収取引の核となる部分『アルストムの補完的なテクノロジーと地理的なリーチ、500ギガワットのインストール・ベース(すでに設置された発電機器資産)、そして再生可能エネルギーや送配電の幅広い製品ポートフォリオ』が残っていた。

 GEのジェフ・イメルト会長兼最高経営責任者(CEO)は、ECの決定を受け「GEが世界に冠たるインダストリアル企業へと進化するために、この買収は欠くことのできないステップだ」と話した。

 イメルト氏は、このECの承認によって「早ければ第4四半期中にも買収を完了する道が開けた」と話す。GEは今後、提案された修正点についてコミットメントの完了を目指す。具体的には、アルストムのガスタービン事業の一部とアフターマーケット向けの部品・サービス事業の売却など。

 GEの予測によると、この取引で獲得するアルストム資産の統合が完了すれば、費用面で約30億ドルのシナジー効果が生まれるという。イメルト氏は「この15カ月間、アルストムのテクノロジーや能力を理解すればするほど、すばらしい買収取引だという思いが増した。GEにとってタイミングも内容も申し分のない取引だ」と語る。

 急ピッチでデジタル・インダストリアル企業に変わりつつあるGEは、ビッグデータやアナリティクスを活用してアルストムのインストール・ベースのパフォーマンス向上を図る。またアルストムが持つ専門知識やテクノロジーは、GE全体への迅速なノウハウ拡大を支えるGEストアを充実させることつながる。そして150カ国以上の現地リソースと、発電業界の顧客へのリーチも得られる。

 さらに買収によって、GEは業界で最も幅広く充実した再生エネルギーの製品ポートフォリオを活用できるようになる。また火力発電所のトータルな設計を改善し、世界での競争基盤とスケールを備えた幅広い送配電ポートフォリオとなり、プロジェクトの知識や資金調達の面でもプラスに働く。
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
多少承認に時間はかかったが、この間、日本企業が対抗策を打ち出したわけではない。日本勢の選択肢も少ないのも事実。東芝は不祥事から会社の再生に注力せざるを得ないが、特に原発の再編は早晩起こりえるだろう。三菱重工、日立を含めどこまで思い切れるか。

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