次世代社会彩るタイヤ メーカー各社がコンセプトモデル
ゴム・樹脂の長所兼備
タイヤメーカー各社が「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)」の本格的な到来を見据えたタイヤの開発を進めている。ブリヂストンがゴムと樹脂の「ハイブリッドタイヤ」を試作したほか、米グッドイヤーは「空飛ぶ車」向けのタイヤを模索する。従来の丸くて黒いゴムのタイヤと異なる新たなコンセプトのタイヤが次世代のモビリティー社会を彩るかもしれない。(松崎裕)
ブリヂストンはゴムと樹脂の性質を併せ持つ新素材「SUSYM(サシム)」で製作しコンセプトタイヤを開発した。3Dプリンターを使って竹細工のような形状を一本のサシムで編み上げた。タイヤの内側と外側の強度をタイヤ、ホイール用に分けた構造になっている。空気を使わないエアレスタイヤで、完全自動運転やシェアリングが普及した際に、メンテナンス負荷を低減できるタイヤとして訴求する考えだ。
サシムは従来のゴム素材より高強度、高耐久でより少ない材料でタイヤの性能を出すことができる。熱を加えれば再生や修復も可能になる。企業や団体と連携してタイヤ以外の新製品の開発にもつなげる。会田昭二郎先端技術担当フェローは「全く新しい素材。常識を覆す機能が備わっている」と自信を見せる。
独コンチネンタルは自動運転の本格的な到来を見据え、タイヤのメンテナンスの負荷を軽減する2種類のコンセプトタイヤを開発した。タイヤの構造内にセンサーを組み込んだ「コンチ・センス」は、トレッドの深さや損傷の可能性、温度、空気圧データを収集し継続的にデータを評価し管理する。
タイヤやホイールをネットワーク技術でつなぐ「コンチ・ケア」は、ホイール内に空気ポンプを備え、タイヤの空気圧を遠隔で管理する。ロボタクシーなど自動運転車両によるライドシェアの利用を想定。スタッフが一台一台車両のタイヤを直接見なくても遠隔で空気圧を管理できる。
「空飛ぶ車」普及に貢献
米グッドイヤーは「空飛ぶ車」の利用を想定したコンセプトタイヤ「エアロ」を開発する。飛行用のプロペラと走行用のエアレスタイヤを1本にまとめた。モデルとなっているのは映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の劇中に登場する車型タイムマシン「デロリアン」。デロリアンにグッドイヤーのタイヤが採用された経緯があり、コンセプトタイヤのアイデアの一つになっている。
日本法人日本グッドイヤー(東京都港区)は「未来の課題を意識して企画するコンセプトタイヤだ。空飛ぶ車の普及を後押しして交通渋滞の解決につなげた」(広報)という。今後はプロペラの摩擦抵抗を減らすため磁力を使った技術で回転速度を高めるほか、素材の強度を向上させるなどして研究開発を続けていく。