VW・BMW vs 三菱自動車でプラグインハイブリッド車に熱気?
車種が増えることで市場が活性化するか
独フォルクスワーゲン(VW)とBMWが8日、それぞれ国内向けの新型プラグインハイブリッド車(PHV)を発表した。日本でPHVを発売するのはVWとしては初めて、BMWとして2車種目となる。次世代エコカーとして普及が期待されるPHVだが、国内で販売している車種は三菱自動車の「アウトランダーPHEV」などごくわずか。車種が増えることで市場が活性化するか注目される。
フォルクスワーゲングループジャパン(愛知県豊橋市)は、主力小型車「ゴルフ」のPHV「GTE」を同日発売した。都内で開いた発表会でスヴェン・シュタイン社長は「単なるエコカーではなくエコと走りを融合した」と話した。電気モーターのみの電気自動車(EV)モードの航続距離は51キロメートル。エンジンとモーターを効率よく駆動するハイブリッドモードに加え、スポーティーな走りを楽しめる「GTE」モードも設定した。消費税込みの価格は499万円。
一方のビー・エム・ダブリュー(東京都千代田区)はスポーツ多目的車(SUV)「X5」のPHV「xドライブ40e」を発表。同様に三つの走行モードをそろえEVモードの航続距離は31キロメートル。かさばるバッテリーは床下に収納し荷室のスペースを多めにとった。価格は927万―993万円。12月から納車を始める。高級スポーツPHV「i8」に続く2車種目で、i8に搭載したシステムを流用してディーゼル車と同等、ガソリン車と比べ20万円高に抑えた。
「ディーゼルやガソリンなど多様なパワートレインを提供する中で本命と位置づけるのがPHV」とワーゲンジャパンのマーケティング本部正本嘉宏本部長は強調するが、PHVはまだ市場形成前の段階だ。
トヨタ自動車の「プリウス」に代表されるハイブリッド車(HV)は、国内販売の20%程度を占めるまでに拡大したが、PHVはわずか0・2%。国内最量販車種の三菱自動車の「アウトランダーPHEV」でさえ2014年度の販売は8600台にとどまる。普及のネックは「充電インフラ不足と高い価格帯」とIHSオートモーティブの川野義昭マネージャーは指摘する。
だが充電インフラの整備は進みつつあり、BMWは来年に「7シリーズ」「3シリーズ」などのPHVも発表し、三菱自も商品群を広げる計画だ。川野マネージャーは「EVとHVの折衷としてPHVは実用的な選択肢だ」とも指摘。各社の商品攻勢や低価格化が進めば次世代エコカーの一角をなす可能性は十分ある。
三菱自動車の相川哲郎社長は7月に発売するプラグインハイブリッド車(PHV)の新型「アウトランダーPHEV」発表の席で、「ブランド復活の第一歩」と熱く語った。同車は三菱自が注力する「電動車」と「スポーツ多目的車(SUV)」の両要素を表した車。就任丸1年となる相川社長にとって就任後初の国内の新型車でもある。昨年から欧州勢が相次ぎPHVを発売する中、電動車でリードを続けるため新型車で正念場に挑む。
アウトランダーPHEVは2013年1月に発売し、累計販売6万4000台の世界で最も売れているPHVだ。約2年半の短期間でコストをかけて大幅改良に踏み切った理由は二つある。一つは購入者の約3割が欧州高級車から乗り換えだということ。もうひとつは「欧州車メーカーが続々とPHVを発売する」(相川社長)ことだ。
日本でPHVといえば同車やトヨタ自動車「プリウスPHV」だが、昨年から欧米メーカーが相次ぎPHVを発売し、市場が活性化しつつある。例えば、独BMWは炭素繊維を採用した高級スポーツカー「i8」を発売、独フォルクスワーゲンは主力車「ゴルフ」にPHVを設定、伊ランボルギーニや独ポルシェも投入し、一気に車種の幅が広がった。富士経済の市場予測によると、2030年のPHV市場は13年比33・8倍の304万台に拡大するという。643万台を見込むハイブリッド車(HV)市場に対して、半分近くに迫る。
世界各国の燃費規制強化の動きが各社のPHV拡大を後押しする。欧州では21年に1キロメートル走行で排出する二酸化炭素(CO2)を95グラムに減らす必要があり、中国でも20年には欧米と同等の環境規制が導入される。
競合にPHVかつSUVの車は少ないが、逆に言えばスポーツカータイプのPHVと、現在の独アウディやBMWなどのSUVの両方に対抗しなければならない。そこでフロントデザインの一新や内装の追加に加え、高級車の特徴である静粛性を高めるため30もの部品を変更した。また電気自動車(EV)から発展して開発したため、「他社のPHVとは全く違う乗り味。新しい車と比較しても大きな特徴になる」(同社担当者)。
電動車の販売が多いのは欧州と日本だが、20年頃までの燃費規制の動向を見ると今後は米国と中国で電動車の販売を増やさなければならない。そこで現在アウトランダーPHEVを販売していない米国で「来春の発売を目指す」(相川社長)。中国は「他社に遅れず(電動車を)展開したい」(同)と話し、現地で実証実験を行いながら機会をうかがう。
同車から採用した新フロントデザインは軽自動車を含めた今後の新型車に採用され、まさに新しい三菱自の顔となる。電池の品質問題といった厳しさも乗り越え、次の飛躍に向け先頭に立つ。
フォルクスワーゲングループジャパン(愛知県豊橋市)は、主力小型車「ゴルフ」のPHV「GTE」を同日発売した。都内で開いた発表会でスヴェン・シュタイン社長は「単なるエコカーではなくエコと走りを融合した」と話した。電気モーターのみの電気自動車(EV)モードの航続距離は51キロメートル。エンジンとモーターを効率よく駆動するハイブリッドモードに加え、スポーティーな走りを楽しめる「GTE」モードも設定した。消費税込みの価格は499万円。
一方のビー・エム・ダブリュー(東京都千代田区)はスポーツ多目的車(SUV)「X5」のPHV「xドライブ40e」を発表。同様に三つの走行モードをそろえEVモードの航続距離は31キロメートル。かさばるバッテリーは床下に収納し荷室のスペースを多めにとった。価格は927万―993万円。12月から納車を始める。高級スポーツPHV「i8」に続く2車種目で、i8に搭載したシステムを流用してディーゼル車と同等、ガソリン車と比べ20万円高に抑えた。
「ディーゼルやガソリンなど多様なパワートレインを提供する中で本命と位置づけるのがPHV」とワーゲンジャパンのマーケティング本部正本嘉宏本部長は強調するが、PHVはまだ市場形成前の段階だ。
トヨタ自動車の「プリウス」に代表されるハイブリッド車(HV)は、国内販売の20%程度を占めるまでに拡大したが、PHVはわずか0・2%。国内最量販車種の三菱自動車の「アウトランダーPHEV」でさえ2014年度の販売は8600台にとどまる。普及のネックは「充電インフラ不足と高い価格帯」とIHSオートモーティブの川野義昭マネージャーは指摘する。
だが充電インフラの整備は進みつつあり、BMWは来年に「7シリーズ」「3シリーズ」などのPHVも発表し、三菱自も商品群を広げる計画だ。川野マネージャーは「EVとHVの折衷としてPHVは実用的な選択肢だ」とも指摘。各社の商品攻勢や低価格化が進めば次世代エコカーの一角をなす可能性は十分ある。
好調「アウトランダーPHEV」を大幅改良に踏み切ったワケ
日刊工業新聞2015年6月25日付
三菱自動車の相川哲郎社長は7月に発売するプラグインハイブリッド車(PHV)の新型「アウトランダーPHEV」発表の席で、「ブランド復活の第一歩」と熱く語った。同車は三菱自が注力する「電動車」と「スポーツ多目的車(SUV)」の両要素を表した車。就任丸1年となる相川社長にとって就任後初の国内の新型車でもある。昨年から欧州勢が相次ぎPHVを発売する中、電動車でリードを続けるため新型車で正念場に挑む。
アウトランダーPHEVは2013年1月に発売し、累計販売6万4000台の世界で最も売れているPHVだ。約2年半の短期間でコストをかけて大幅改良に踏み切った理由は二つある。一つは購入者の約3割が欧州高級車から乗り換えだということ。もうひとつは「欧州車メーカーが続々とPHVを発売する」(相川社長)ことだ。
日本でPHVといえば同車やトヨタ自動車「プリウスPHV」だが、昨年から欧米メーカーが相次ぎPHVを発売し、市場が活性化しつつある。例えば、独BMWは炭素繊維を採用した高級スポーツカー「i8」を発売、独フォルクスワーゲンは主力車「ゴルフ」にPHVを設定、伊ランボルギーニや独ポルシェも投入し、一気に車種の幅が広がった。富士経済の市場予測によると、2030年のPHV市場は13年比33・8倍の304万台に拡大するという。643万台を見込むハイブリッド車(HV)市場に対して、半分近くに迫る。
世界各国の燃費規制強化の動きが各社のPHV拡大を後押しする。欧州では21年に1キロメートル走行で排出する二酸化炭素(CO2)を95グラムに減らす必要があり、中国でも20年には欧米と同等の環境規制が導入される。
競合にPHVかつSUVの車は少ないが、逆に言えばスポーツカータイプのPHVと、現在の独アウディやBMWなどのSUVの両方に対抗しなければならない。そこでフロントデザインの一新や内装の追加に加え、高級車の特徴である静粛性を高めるため30もの部品を変更した。また電気自動車(EV)から発展して開発したため、「他社のPHVとは全く違う乗り味。新しい車と比較しても大きな特徴になる」(同社担当者)。
電動車の販売が多いのは欧州と日本だが、20年頃までの燃費規制の動向を見ると今後は米国と中国で電動車の販売を増やさなければならない。そこで現在アウトランダーPHEVを販売していない米国で「来春の発売を目指す」(相川社長)。中国は「他社に遅れず(電動車を)展開したい」(同)と話し、現地で実証実験を行いながら機会をうかがう。
同車から採用した新フロントデザインは軽自動車を含めた今後の新型車に採用され、まさに新しい三菱自の顔となる。電池の品質問題といった厳しさも乗り越え、次の飛躍に向け先頭に立つ。
日刊工業新聞2015年09月09日 自動車面