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台風19号、被災した各企業の最新情報。供給網は大丈夫か?

台風19号、被災した各企業の最新情報。供給網は大丈夫か?

水が引ききらない長野市「北部工業団地」(14日)

記録的な大雨となった台風19号が企業活動に影響を及ぼしている。浸水により工場の稼働を停止している企業や、工場を稼働していても取引先の被災状況やサプライチェーン(供給網)への影響の確認に追われた。供給網の状況次第では、企業活動への影響が長引く可能性がある。国土交通省によると、15日午後時点で47河川で堤防66カ所が決壊。広域に及ぶ被災地で企業活動の今後が懸念される。

工場稼働停止・減産


 パナソニックは、電子材料を生産する郡山工場(福島県郡山市)で、15日の稼働を停止した。同工場は隣接する阿武隈川が氾濫したことで冠水している。再開のめどは立っていないという。

 IHIは、福島県相馬市にある相馬第一工場と同第二工場が台風の影響で市内全域が断水しており、稼働を停止している。ただ建物や設備などの破損はなく、復旧次第、稼働する予定。瑞穂工場(東京都瑞穂町)など、そのほかの工場は、被害はなく稼働している。

 アルプスアルパインの子会社で電気機械器具を製造するアルパインマニュファクチャリングの赤井工場(福島県いわき市)が浸水した。停電と断水のため、復旧に10日間程度かかる見通しだ。

 太陽誘電は100%子会社でインダクターを製造している福島太陽誘電(福島県伊達市)の工場が浸水し、稼働を停止している。復旧のめどについては調査を続けている。

 太平洋セメントは、12日から埼玉工場(埼玉県日高市)と熊谷工場(埼玉県熊谷市)で生産数量を抑える抑制運転をしている。生産設備に被害はないが、出荷状況次第でいつから通常稼働するかは不明。出荷できなければセメントを貯蔵するサイロが満杯になるため生産調整している。

 工場外出荷貯蔵設備のある相馬サービスステーション(福島県相馬市)は、浸水による電気系統の不具合で稼働停止中だ。早期復旧を目指しているが現在のところ復旧のめどは立っていない。

 住友大阪セメントの栃木工場(栃木県佐野市)は、12日20時から稼働停止している。地下にある発電のための木質チップの輸送部分が浸水したためで、15日昼時点も稼働を控えている。

供給網・取引先の被災懸念


 自社の生産拠点は通常通り稼働しているものの、供給網への影響や取引先の被災状況の確認に追われた企業もある。

 台風19号の供給網への影響について、トヨタ自動車関係者は「今、特に東北地方、中部地方のサプライヤーの状況を調べている。(サプライチェーン全体に)影響がまったくないわけではない。サプライヤーの状況をしっかりみながら、必要なサポートは“オールトヨタ”でやっていきたい」と話した。

 ホンダは国内全工場で通常稼働しているが、一部サプライヤーで浸水被害が出た。供給遅れなどの可能性もあり、今後の影響は確認中だが、16日は通常稼働の予定だ。

 日産自動車は各拠点で通常通り稼働させたが、一部地域ではサプライチェーン(供給網)や物流に影響があった。だが在庫を確保していた部品などを利用することで工場の生産に影響はなかった。

 いすゞ自動車は国内全工場で14、15日ともに通常通り稼働したが、15日は残業を止めた。サプライチェーンについては現時点で影響はない見込みだが、継続的に状況を見ながら稼働対応を決める。

 三菱ふそうトラック・バスは、川崎工場(川崎市中原区)が15日午後からサプライヤーが被災した影響で一部生産ラインの稼働を止めた。16日は午前は通常稼働の予定だが、午後はサプライヤーの状況などを確認した上で稼働するかを決める。

 グローリーはレジ釣り銭機の組み立てなどを手がける埼玉工場(埼玉県加須市)や各地の営業拠点で被害はなく、埼玉工場は通常通り操業した。ただ部品調達先が複数被災している可能性があるとして、調達先の数百社に電話やメールで問い合わせを行った。

 日立建機は、茨城県内にある土浦工場(土浦市)など5カ所の工場がいずれも外灯などの破損はあったが、目立った影響もなく稼働した。サプライヤーの被害状況によっては一部部品の調達が困難になるとみているが、現状は問題ないという。数カ所の販売拠点で、浸水被害を受けた。

 昆布製品や総菜を手がけるフジッコは、埼玉県加須市の関東工場周辺で避難指示が発令されたが、他地域も含め全国の生産拠点に被害はなかった。一方、東北から中部地方にかけて広範囲に小売り・量販店が被害を受けた。一部で物流が停滞したため、被害状況の把握に追われた。

中小、生産に遅れ。浸水・交通事情・代替生産


 アイリスオーヤマ(仙台市青葉区)は、使い捨てカイロや食品向け脱酸素剤を生産する大河原工場(宮城県大河原町)が30センチ―40センチメートル浸水した。生産設備や商品の一部が水に浸かった。15日から通常稼働しているが交通状況の問題で社員の2割が出社できていない。

 ホーコス(広島県福山市)は、郡山中央工業団地(福島県郡山市)で建築設備を製造する郡山事業所が浸水した。工作機械、レーザー加工機などが水につかるなどの被害があり生産は停止中。被害状況確認中で生産再開時期は未定。同社は工作機械事業を手がけており生産再開のため機械整備の人員を現地に送る可能性もある。

 毎日発條(大阪市西淀川区)は、自動車関連の線材などを手がける東北工場(宮城県丸森町)で事前に土のうを準備していた。工場内の一部で浸水があったが線材曲げ加工機やプレス機など設備に影響はなかった。12日に一時的に停電したが復旧し操業を再開した。

 オリオン機械(長野県須坂市)のグループのうち、千曲川が決壊した穂保堤防に近い北部工業団地内で産業用冷熱機器の設計・製造販売を手がけるリオン熱学(長野市)は、1階の大半が浸水。14日からグループを挙げて片付け作業を進めているが、組み立て工程などの被害が甚大なため復旧のめどがたっていない。オリオン機械の敷地で代替生産を予定。同グループで穂保とは別の千曲川近くに更埴工場(千曲市)を構えているオリオン精工(須坂市)に被害なく、精密温調機器などの製造を続けている。

 エムケー精工の本社(千曲市)には被害がなかった。ただ千曲川を挟んだ対岸に位置し、音響機器などを扱うグループのエムケー電子(長野市)は、1階が約50センチメートル冠水した。

 同工業団地でチラシやカタログの印刷・製本を手がける杏花印刷は1階の印刷機、製本機が冠水した。2階の事務所は無事。被害の詳細を確認中だが、シリンダーなど印刷機の部品交換をメーカーに求める予定。停電で電話がつながらず、連絡がままならない。「甚大な被害に対応した補助金などの支援をお願いしたい」(赤地精社長)という。
                     


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日刊工業新聞2019年10月16日

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