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マツダの低燃費技術「スカイアクティブ」を裏で支える注目企業は?

文=清水秀和(証券アナリスト) 日本ピストンリングの新合金、医療系素材にも可能性
マツダの低燃費技術「スカイアクティブ」を裏で支える注目企業は?

歯科インプラント製品「IAT EXA」の一部

 マツダの低燃費技術「スカイアクティブ」は、自動車の燃費を2―3割改善したが、裏方で支えるのが日本ピストンリング製のピストンリングやバルブシートなどである。そのピストンリングの国内シェアは3割を誇る。国内外の自動車のほか陸舶エンジン用組付・補修部品の製造販売を手掛け、いずれも高いシェアを誇る。特に燃費向上の主役はエンジンとの見方から、国内の完成車メーカーがエンジン本体の改良に本腰を入れ始めている。

 現状では、エンジンの最高熱効率は約40%だが、2020年に45%程度、その先には効率60%を狙う。新構造・新原理のエンジンが登場する可能性もある。

 一方、「エンジン搭載車が将来的に減少するとの危機感から新たな収益の柱として医療事業の育成を急ぐ」(IR会場の山本彰社長)。独自の合金技術と線状加工技術を生かし、高価なプラチナに代わるチタン・タンタルの新合金など、医療系素材開発を強化する。

 例えば、新合金は複雑な形状も熱処理で加工しやすく、形状記憶性があるほか、体内での毒性も低いこと、レントゲン撮影をした際に視認性が高いなどから、血管を広げる「ステント」や動脈瘤(りゅう)の治療器具などへの応用を目指す。

 さらに14年には、石福金属興業(東京・千代田)から事業譲渡を受け、顎骨に人工歯を埋め込むための土台となる歯科インプラント(人工歯根)事業に参入すると発表。インプラントは栃木工場で生産し、5年後をめどに約20億円の売上高を目指す。なお会社側は、海外拡販進め17年度の売上高550億円以上、営業利益率7%以上を狙う意欲的な新中期経営計画を発表した。業績は好転しつつある。

 15年3月期は、国内こそ軽自動車の販売が減り、低迷も海外向けはインドネシアにおける合弁解消の影響をカバーして、非日系自動車メーカーへの拡販が進んだことにより、小幅増収、損益面でも先行投資による償却負担が増加したものの、合理化や売上高の増加などにより、営業利益は19億4600万円と14年3月期比10・6%増と好調だった。16年3月期は為替想定1ドル=110円とやや保守的であり、上ぶれの着地が予想される。
 <プロフィル>
 清水秀和=証券アナリスト兼IMSアセットマネジメント社長
 年間約150社を取材し、延べ5000社の取材実績を持つ。成長する技術系製造業の企業発掘を専門としており、身近で分かりやすい解説に定評がある。株式公開予定企業育成の実務経験を生かし、東北大学や日本大学などでベンチャー起業論の講演も多数。
 ※「アナリスト千里眼・成長企業発掘編」を毎週木曜日に日刊工業新聞で連載中
日刊工業新聞2015年09月03日 金融面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
 日本ピストンリングは歯科インプラント製品群など新事業をスタートさせた。2014年10月に石福金属興業から買収した事業をベースに今後は自動車部品で培った金属加工技術も活用する。将来は非自動車部品で売上高比率30%にすると構想を持っている。

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