「あまちゃん」再放送で再び岩手に脚光!?南部といえば、、
「もう、進化はしない」と言われた南部鉄器に新しい風
東北新幹線の水沢江刺駅から車で5分ほど走ると南部鉄器の一大産地、岩手県奥州市水沢地区に入る。この町に、定番鍋や欧米で人気のある色彩豊かなティーポットなどを製造する及源鋳造(岩手県奥州市、及川久仁子社長、0197・24・2411)の本社兼工場とファクトリーショップがある。
創業は1852年(嘉永5年)。鋳物鍋の製造販売、産地問屋として急須や鉄瓶の販売を手がけてきた。今でこそ職人とデザイナーによる共同制作商品は数多くあるが、同社は1970年代から鉄鍋などで何度もグッドデザイン賞を受賞するなど、高いデザイン性で評価を得ている。砂の細かい産地だからこそ実現する滑らかな鋳肌を生かした商品も展開する。
「愉しむをたのしむ」―。1月、ブランドストーリーを掲げた新しいホームページ(HP)を立ち上げ、ブランドマークも刷新した。砂型に鉄を流し込む湯口をイメージし、HPでモノづくりの哲学を文章で打ち出した。
5代目の及川社長が「デザインが良いのは当たり前。これからはその先にある新たな価値を伝えていく時代」と話すように、海外展開、企業のブランド化を意識した動きだ。
かつて「古い、さびる、重い、手入れが面倒」と敬遠されがちだった南部鉄器。産地がはっきりしていて、トレーサビリティー(履歴管理)も明確。再資源化もできる鉄器に対する消費者の意識も変わってきている。「さびないように手入れして使うのが楽しい。10年後に鍋がどう変化するのか楽しみ」など嗜好(しこう)性の高さも人気の理由になっている。「『愉しむをたのしむ』。意味や価値を社員全員が共有し、伝えていくことが必要」と及源鋳造の思想をこの一言に集約する。
「南部鉄器の真の価値とは何か。どうマーケティングすべきか」。及川社長は自問自答を続ける。25歳で家業の及源鋳造に入社して鋳型製作に携わったが、言われたものをそのままつくる姿勢に疑問を感じた。展示会に出れば、みの傘、わらじと一緒に並べられる。「何かが違う。このままじゃダメだ」。常務になって海外市場の開拓、自社商品の開発、差別化に力を注いだ。今、OIGENブランドは米国、欧州などに浸透している。
99年、当時珍しかったレシピつきの調理器具を発売し、大ヒット商品に。これは新たな気付きをもたらすきっかけにもなった。及源鋳造の鍋を愛用するシェフの話を聞いて「鉄のすごさや、自社の現場力の深さに初めて気付いた」。この経験が強みを再認識するきっかけになった。「人間も鉄も、いつか土に還る同じ地球の資源。鉄という素材がいい生き方をするように加工したい」との考えから、今後は自社の強みを最大限に生かせるプロユース向けへの展開や、特許をもつさびない無塗装鍋を海外に売り出す考えだ。
1090年頃に始まったとされる奥州南部鉄器の歴史。時を刻み、連綿と受け継がれてきた伝統工芸品に新たな価値の創出や売り方が求められている。創業160年を超える老舗は、「もう、進化はしない」と言われた南部鉄器に新しい風を吹き込んでいる。
創業は1852年(嘉永5年)。鋳物鍋の製造販売、産地問屋として急須や鉄瓶の販売を手がけてきた。今でこそ職人とデザイナーによる共同制作商品は数多くあるが、同社は1970年代から鉄鍋などで何度もグッドデザイン賞を受賞するなど、高いデザイン性で評価を得ている。砂の細かい産地だからこそ実現する滑らかな鋳肌を生かした商品も展開する。
「愉しむをたのしむ」―。1月、ブランドストーリーを掲げた新しいホームページ(HP)を立ち上げ、ブランドマークも刷新した。砂型に鉄を流し込む湯口をイメージし、HPでモノづくりの哲学を文章で打ち出した。
5代目の及川社長が「デザインが良いのは当たり前。これからはその先にある新たな価値を伝えていく時代」と話すように、海外展開、企業のブランド化を意識した動きだ。
かつて「古い、さびる、重い、手入れが面倒」と敬遠されがちだった南部鉄器。産地がはっきりしていて、トレーサビリティー(履歴管理)も明確。再資源化もできる鉄器に対する消費者の意識も変わってきている。「さびないように手入れして使うのが楽しい。10年後に鍋がどう変化するのか楽しみ」など嗜好(しこう)性の高さも人気の理由になっている。「『愉しむをたのしむ』。意味や価値を社員全員が共有し、伝えていくことが必要」と及源鋳造の思想をこの一言に集約する。
「南部鉄器の真の価値とは何か。どうマーケティングすべきか」。及川社長は自問自答を続ける。25歳で家業の及源鋳造に入社して鋳型製作に携わったが、言われたものをそのままつくる姿勢に疑問を感じた。展示会に出れば、みの傘、わらじと一緒に並べられる。「何かが違う。このままじゃダメだ」。常務になって海外市場の開拓、自社商品の開発、差別化に力を注いだ。今、OIGENブランドは米国、欧州などに浸透している。
99年、当時珍しかったレシピつきの調理器具を発売し、大ヒット商品に。これは新たな気付きをもたらすきっかけにもなった。及源鋳造の鍋を愛用するシェフの話を聞いて「鉄のすごさや、自社の現場力の深さに初めて気付いた」。この経験が強みを再認識するきっかけになった。「人間も鉄も、いつか土に還る同じ地球の資源。鉄という素材がいい生き方をするように加工したい」との考えから、今後は自社の強みを最大限に生かせるプロユース向けへの展開や、特許をもつさびない無塗装鍋を海外に売り出す考えだ。
1090年頃に始まったとされる奥州南部鉄器の歴史。時を刻み、連綿と受け継がれてきた伝統工芸品に新たな価値の創出や売り方が求められている。創業160年を超える老舗は、「もう、進化はしない」と言われた南部鉄器に新しい風を吹き込んでいる。
日刊工業新聞2015年03月13日 モノづくり面