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米ケンブリッジ発のイノベーションハブが日本に注目する理由とは?

CICジャパンの山川恭弘氏に聞く
米ケンブリッジ発のイノベーションハブが日本に注目する理由とは?

CICジャパン代表・山川恭弘氏

 シェアオフィスを手がける米ケンブリッジ・イノベーション・センター(CIC)が2020年夏の東京オフィスの開業に向け、着々と準備を進めている。同社はハーバード大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)などがある米東海岸のケンブリッジ発祥で、同地域を起業の一大拠点にした立役者で知られる。姉妹組織で起業家向けネットワーキングイベントを行うベンチャーカフェは、東京・虎ノ門で先行してサービスをはじめ、話題となっている。CICジャパンとベンチャーカフェの代表を務め、米バブソン大学准教授でもある山川恭弘氏に日本進出の理由と今後の展望を聞いた。(聞き手・大城 麻木乃)

Q:アジア初の拠点が日本でした。その理由は。
 「日本は安心安全でクリーンで経済的に豊かだが、起業小国だ。明らかに欠けているものがある。起業家精神だ。それは、ちょっとしたきっかけで着想を得て行動に移せるものかもしれない。我々がそうした少しのきっかけを与える場を提供できればと思う」

Q:CICとベンチャーカフェの関係は。
 「CICは貸しオフィスというハードウエアを提供し、ベンチャーカフェは起業に関わる人々をつなぐソフトウエアの役割を果たす。二つがクルマの両輪のように回ることで、機能する仕組みだ」

Q:シェアオフィスは日本にも増えてきました。CICの特徴は。
 「いろいろな都市に点在してオフィスを置く同業もあるが、当社は一つのビルの中に起業家に必要なサービスを備えているのが強みだ。米国の場合、一つのビルにベンチャーキャピタルが20社ぐらい入居し、起業家は資金調達が必要になればいつでも相談に行ける。法律事務所や会計事務所もある。オフィス賃料は相場より高めに設定しているが、高いなりの理由に納得して入居している人が多い」

 「一つのビルにこだわる理由は、イノベーションは遠くよりも近く、違うビルよりも同じビル、同じビルなら同じ階、同じ階なら廊下挟んで向かい合っている者同士ほど起きやすいというデータがあるためだ。集積させることで、コラボレーションを促すことを意図している」

Q:日本でも同様の事業を行うのですか。
 「コンセプトは同じだが、日本なりのテーマを考えたい。例えば高齢化社会であったり、モビリティであったり、高齢化×AIであったり、女性起業家にフォーカスしたり、いろいろ検討している。来夏の開業までにはテーマを固め、関連業界の起業家を積極的に誘致していきたい」

Q:2018年3月に始めたベンチャーカフェの活動状況はいかがですか。
 「毎週木曜日の午後4時から9時まで『サーズデイ・ギャザリング(木曜日の集まり)』というイベントを虎ノ門ヒルズで実施している。起業家が弁護士などに無料相談できるコーナーやビジネス関連のセミナーを行うコーナー、ドリンク片手にネットワーキングできるコーナーがある。毎週、平均して260人が参加しており、20%が起業家、20%が学生、大手企業の新規事業を手がける人や外国人もいる。女性比率は25%と相対的に高いと思う。みな背番号(肩書き)抜きで対等に交流している」

 「日本人はネットワーキングが得意ではない。そのため、開始時間の4時に来たら、どのように人に話しかけたらいいかロールプレイで教えている。またセミナーは、わざと1時間ごとに日本語、英語、日本語と言語とテーマを入れ替えている。日本人はセミナーに来ると、最初から最後まで座ったままだが、言語が変わると客層が変わり、入れ替わるタイミングになる。好きな時に入って、好きな時に出てネットワーキングすればよい。だからイスも少ししか置いていない」

Q:参加費無料ですが、どのようなビジネスモデルですか。
 「CICは貸しオフィス事業で普通のビジネスだが、ベンチャーカフェは非営利の活動だ。森ビルやJTといった企業からの寄付金を集めて運営している。日本には寄付の文化がなく、資金集めには本当に苦労したが、何とか集まった。会場へ誘導するスタッフは大学生などのボランティアが担っている。弁護士や連続起業家などのセミナーの講師も全部ボランティアだ」

Q:今後の目標は。
 「まずは来夏の開業を成功裏に迎えたい。CICのオフィスは内装にとことんこだわるつもりだ。その時の最先端のデザインを取り入れつつ、体に負担の少ないイスや机をそろえる。起業家の中には誰と会っているのか見られたくない人もいるため、そうした方面への配慮や防音対策もしっかり取る。米国のオフィスはわざと廊下を狭くして、すれ違う人に挨拶しないと通れない工夫などを施しているが、そうした入居者同士が自然に交流する仕掛けも取り入れるか検討中だ」

 「親会社のCICは、2025年までに50都市への展開を目標に掲げている。今は6カ国11都市(19年8月時点)。当然、東京の次は、日本国内の他の都市かアジアの他の国へ進出するか考えていきたい」
日刊工業新聞2019年9月12日(国際面)に加筆
大城麻木乃
大城麻木乃 Oshiro Makino 編集局第二産業部 記者
山川氏は虎ノ門を起業の街にしたいのこと。米国での実績があるだけに、将来が楽しみです。

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