揺れる東芝「異例の決算再延期」市場の信頼回復遠のく
実務を担う3人の社内取締役の選任も延期に
東芝が2015年3月期決算と過年度決算修正の発表を先送りした。しかも延期の理由の一つとして、不適切な会計処理の事象が新たに発生したことを挙げた。不適切会計に伴う損失額が大きく膨らむ可能性は少ない模様だが、投資家の不信感は募るばかりだ。これでは市場の信頼を取り戻し、経営を立て直すことは難しい。約束の履行と正確な情報発信を徹底すべきだ。
東芝は31日に15年3月期決算と過年度決算修正を発表し、不適切会計問題に関し一つの区切りを迎えるはずだった。だが会計処理の適切性について調査が必要な事象や米国子会社で不適切な事象が発覚し、問題の調査そのものに疑問が生じてきた。調査の本質が揺らぐようだと、再建の出発点にも立てない。
室町正志会長兼社長は31日の会見で、新たな不適切案件に関し「監査の途中で指摘を受けたもの、内部通報によって発覚したものがある」と説明した。巨大企業の調査を短期間で行うのは困難な作業だろうが、果たして、これで打ち止めなのかという疑問は残る。
特に市場関係者の間では、傘下の米ウエスチングハウス(WH)に対し不適切会計や減損を疑う声がある。同日の会見でもWHに対する質問が相次いでおり、市場では業績の下振れリスクを警戒している。また東芝の遅々とした対応に不満の声も出ている。疑念や不満を払拭(ふっしょく)するには、正確な情報発信を早期に行うしかない。
31日までには決算発表に加え、社内取締役3人を決めるはずだったが、その選任の発表も延期した。実務を担う社内取締役に誰が就くのか注目されていたが、それも肩透かしされた格好だ。
年度末までに構造改革の方向性を示す
社内取締役は構造改革の陣頭指揮を執るだけに、東芝再生のカギを握ると言っても過言ではない。室町会長兼社長も課題事業に関し「年度末までには方向性を説明したい」と語り、構造改革の必要性について言及した。社外に対し再生に向けた姿を示す意味でも新たな経営体制を早期に明らかにすべきだろう。
再発を防ぐには事業の再構築と競争力の強化が急務だ。決算や役員人事などを予定通りに実施できなければ、それらの作業にも影響し遅延する恐れがある。取引先などステークホルダーも東芝の再建を期待しているだけに、早期の発表が待たれる。
東芝の不適切会計問題を巡り、新たに10件程度の疑わしい案件が発覚した。監査の過程で指摘を受けたケースがあったほか、内部通報によって発覚したケースもあった。
同社は有価証券報告書の再延期が必要となった理由について、(1)複数の国内・海外子会社で不適切会計の調査を必要とする事象が発生(2)固定資産減損額に伴う費用の計算に誤りがあった(3)売上高や原価を年度ごとに計上する工事進行基準案件で米国子会社において引当金の計上時期に不適切性が認識された(4)米国子会社に対する監査が長期化した―ことなどを挙げた。
新たな問題が発覚する可能性
これらの問題をあぶり出した要因の一つが、内部通報だった。室町正志会長兼社長は「内部通報が増加傾向にある。内部通報という手法が社内の企業風土の改善につながるという意識が従業員の間で出てきた」と強調した。「10件以降は新たな事象で出てきていない」と説明したが、今後、新たな問題が発覚する可能性は否定できない。
「内部通報に丁寧に対応するのがステークホルダーの信頼を回復するには必要」と室町会長兼社長が指摘するように、自浄作用を機能させ膿(うみ)を出し切る覚悟が問われる。
「内部通報によって発覚したものがある」
東芝は31日に15年3月期決算と過年度決算修正を発表し、不適切会計問題に関し一つの区切りを迎えるはずだった。だが会計処理の適切性について調査が必要な事象や米国子会社で不適切な事象が発覚し、問題の調査そのものに疑問が生じてきた。調査の本質が揺らぐようだと、再建の出発点にも立てない。
室町正志会長兼社長は31日の会見で、新たな不適切案件に関し「監査の途中で指摘を受けたもの、内部通報によって発覚したものがある」と説明した。巨大企業の調査を短期間で行うのは困難な作業だろうが、果たして、これで打ち止めなのかという疑問は残る。
特に市場関係者の間では、傘下の米ウエスチングハウス(WH)に対し不適切会計や減損を疑う声がある。同日の会見でもWHに対する質問が相次いでおり、市場では業績の下振れリスクを警戒している。また東芝の遅々とした対応に不満の声も出ている。疑念や不満を払拭(ふっしょく)するには、正確な情報発信を早期に行うしかない。
31日までには決算発表に加え、社内取締役3人を決めるはずだったが、その選任の発表も延期した。実務を担う社内取締役に誰が就くのか注目されていたが、それも肩透かしされた格好だ。
年度末までに構造改革の方向性を示す
社内取締役は構造改革の陣頭指揮を執るだけに、東芝再生のカギを握ると言っても過言ではない。室町会長兼社長も課題事業に関し「年度末までには方向性を説明したい」と語り、構造改革の必要性について言及した。社外に対し再生に向けた姿を示す意味でも新たな経営体制を早期に明らかにすべきだろう。
再発を防ぐには事業の再構築と競争力の強化が急務だ。決算や役員人事などを予定通りに実施できなければ、それらの作業にも影響し遅延する恐れがある。取引先などステークホルダーも東芝の再建を期待しているだけに、早期の発表が待たれる。
東芝の不適切会計問題を巡り、新たに10件程度の疑わしい案件が発覚した。監査の過程で指摘を受けたケースがあったほか、内部通報によって発覚したケースもあった。
同社は有価証券報告書の再延期が必要となった理由について、(1)複数の国内・海外子会社で不適切会計の調査を必要とする事象が発生(2)固定資産減損額に伴う費用の計算に誤りがあった(3)売上高や原価を年度ごとに計上する工事進行基準案件で米国子会社において引当金の計上時期に不適切性が認識された(4)米国子会社に対する監査が長期化した―ことなどを挙げた。
新たな問題が発覚する可能性
これらの問題をあぶり出した要因の一つが、内部通報だった。室町正志会長兼社長は「内部通報が増加傾向にある。内部通報という手法が社内の企業風土の改善につながるという意識が従業員の間で出てきた」と強調した。「10件以降は新たな事象で出てきていない」と説明したが、今後、新たな問題が発覚する可能性は否定できない。
「内部通報に丁寧に対応するのがステークホルダーの信頼を回復するには必要」と室町会長兼社長が指摘するように、自浄作用を機能させ膿(うみ)を出し切る覚悟が問われる。
日刊工業新聞2015年09月01日 3面