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羽根のない撹拌体で“らせん状の回転渦”、発見した意義

埼玉大が確認
羽根のない撹拌体で“らせん状の回転渦”、発見した意義

撹拌体が回転すると規則的な回転渦が遠心力でらせん状に外へ広がることが分かった

 埼玉大学の平原裕行教授は、羽根のない撹拌(かくはん)体によって液体中にらせん状の回転渦が発生することを確認した。渦が規則的に発生し、きれいならせんを描いて外側に拡散することで、より効率的に液体を撹拌できるという。同じサイズの羽根の撹拌体に比べ、運動量は約1・8倍。湖沼の水質改善や空調の効率化などにより高い効果を発揮できるとしている。

 羽根のない撹拌体は円盤状の本体に複数の穴が開いており、回転すると下部の穴から側面の穴に向かって水流が起こり、それが放射状に拡散することで撹拌する。すでに化学品や食品などの分野で利用されているが、そのメカニズムについてはほとんど解明されていない。

 平原教授は複数の実験と数値解析により、「自然界では発生しない現象。竜巻のような渦が発生し、それが横に寝て、らせん状に外側へ広がるイメージ」(平原教授)で液体、そして気体も移動することを突き止めた。通常なら徐々にエネルギーが減衰して拡散しなくなるが、「きれいな回転渦が形を崩さず、維持されて遠くまで拡散する」(同)という。ポンプの圧力で水流を起こす場合と比べても、「ポンプだと吐出口に力がかかりすぎて渦が乱れてしまう。それに対し、遠心力によって自然ときれいな圧力が生じる」ため、水流に乱れが生じず、エネルギーが減衰しない。

 これにより、例えば水質が悪化している湖沼を撹拌によって改善する場合、「より遠くまで広がるので、撹拌装置を湖沼の真ん中に置く必要がなく、岸辺からでも十分な効果が見込める」という。空調用としても「空気循環のため、部屋の天井によく大きなプロペラを付けているが、それも小さくできる。隅に置いてもいい」と一般の製品への応用も可能とみている。

 この成果を論文にまとめ、米国機械学会に投稿済み。現在審査中で「まったく新しい理論ではないが、『うまく使えばこんなユニークな流れをつくれるのか』という反応はあり得る」と期待している。
日刊工業新聞2019年8月6日

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