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来年度、国は何にお金を使う?(1)経済産業省

霞ヶ関で「概算要求」案の編成が大詰め
 政府部内で、2016年度予算編成の土台となる概算要求案の策定が大詰めを迎えた。来年度、政府はどんな分野に政策資源を投じるのか。日刊工業新聞紙面に掲載された各省の概算要求案を整理した。第1回は経済産業省。

要求総額 21%増


 経済産業省は25日、16年度予算の概算要求案を自民党の政調と経済産業部会の合同会議に提示、おおむね了承された。一般会計とエネルギー対策特別会計を合わせた要求総額は、15年度予算比約21%増の約1兆3700億円となる。モノのインターネット(IoT)の普及や産学連携の活性化による生産性向上、地域の中小企業と経営支援など地域経済の活性化、再生可能エネルギーや省エネ補助金の拡充などが盛り込まれた。
 再生可能エネルギー政策では地熱発電などの調査・開発支援などを充実させる。このほかサイバーセキュリティー対策も強化する。

◆中小支援を強化
 経済産業省は2016年度予算の中小企業対策費の概算要求額を15年度当初予算比23%増の1370億円とする方針を固めた。要求段階では14年度、15年度を上回る水準で、地域経済の活力を支える中小・中堅企業の成長支援に軸足を置く。施策効果を高めるための経営支援体制強化も柱に据える。25日開催される自民党の経済産業部会に提示する。
 「経済社会の持続性を高める」施策として793億円を計上。中小企業の相談拠点として14年に全国に開設した「よろず支援拠点」を中心とした経営支援体制の強化に125億円、中小企業や小規模事業者が大学などと共同で進める技術やサービス開発、標準化戦略の支援に198億円を盛り込む。地域に密着する小規模事業者を重視する流れも続いており、これら事業者への販路開拓支援は15年度当初予算比ほぼ倍増の112億円を措置する。このほか、地域資源を活用した商品開発や販路開拓、中心市街地や商店街活性化に57億円を要求する。

◆IoTにも重点
 経産省は2016年度にモノのインターネット(IoT)実現に向けた新規プロジェクトを10件超立ち上げる。インフラ点検などに使う無給電データ収集端末などの基盤技術を開発するほか、車載センサーと地図情報が連動した自動走行の実証も行う。16年度概算要求に約140億円を盛り込む。日本の労働人口が縮小する中、IoTの活用で生産性を向上させると同時に、IoT推進を巡る欧米との国際競争にも備える。

◆中堅製造業を育成
 経産省は2016年度から地域経済の中核をなす中堅製造業を育成する支援ネットワークの構築に乗り出す。安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」の効果を地方へ波及させる重要課題を解決するため、従来政策が手薄だった中堅企業向けの支援を強化する。既存の公的支援サービスの「見える化」も図って、全国で地域経済をリードする企業を数多く創出するのが狙い。16年度予算の概算要求に事業費を盛り込む。
 新たな支援体制は、まず中核企業候補を中心に産業分野別のプラットフォームを組成する。医療・バイオ、航空機エンジン、食品流通、次世代ロボット、パワーデバイスなどの分野を想定する。
日刊工業新聞2015年08月25日、26日付1面&2面
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
「官僚たちの夏」さながらに、各府省で予算編成に向けた概算要求づくりが本格化しています。期限は今月末。経産省は、IoTや中堅・中小企業の育成に重点を置くようです。

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