自動車の軽量化を考える(7)摩擦撹拌点接合技術
鉄、アルミ、CFRPは”水と油”。相容れない素材をどうくっつける?
異種材料を接合する技術の一つに摩擦熱を利用した「摩擦撹拌点接合技術」がある。マツダはアルミニウム材同士の接合や、鉄とアルミ材の接合に同技術を利用し、スポーツカーに採用してきた。その同社が次世代の軽量化対策として研究開発に取り組むのが、同技術を応用したアルミと樹脂の接合だ。
【アルミと樹脂】
摩擦撹拌点接合技術は板材の接合箇所を上下から挟み込み、加圧しながら上側のピン状の工具を回転させる。これにより発生する摩擦熱で材料を軟化・流動させて点接合する。
マツダは2003年、同技術を使ったアルミ材同士の接合技術を開発した。抵抗溶接に比べて使用エネルギーの大幅な低減を実現。スポーツカー「マツダRX―8」のリアドアとボンネットに採用した。続いて05年には鉄とアルミ材の点接合技術を開発し、スポーツカー「ロードスター」のアルミ製トランクリッドと鋼板製ボルトリテーナーの接合に採用した。
同技術をアルミ材と、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などの樹脂との接合に応用する。国主導で13年に発足した新構造材料技術研究組合(ISMA)にも参画し、10年先を見すえた研究を進める。
一般的に車両重量のうち、ボディーシェルとクロージャー(ボンネット、ドア、ルーフなど)を合わせた車体部分が約40%を占める。この車体の軽量化に向けて、多様な素材を適材適所で使う「マルチマテリアル車体」の研究が欧州などでも進み、異種材料の接合技術の開発が重要ポイントとなっている。
【リベット不要】
マツダ技術研究所革新研究創成部門の杉本幸弘主幹研究員は「競合する接合技術と比べて、摩擦撹拌点接合技術のメリットは安価な点」と説明する。工具を半永久的に使えるほか、リベット(びょう)を使わずに接合するためコストを削減できる効果もある。板厚の影響も受けにくい。一方で「使う装置は従来と同じで対応できるが、相手は樹脂。工具の回転速度や工具の形状、時間、前処理の方法など最適な条件を見つけなければならない」という難題もある。
マツダでは10年間の研究期間を三つのステージに分け、最初のステージはメカニズム解析、接合時間の短縮など技術構想の実証に充てる。第2ステージは実際の部品に接合技術を使い、強度などを実証。最後の第3ステージはコストや品質保証などで量産面の課題を検証する。「部分的に早く使える技術は先行して実用化していきたい」(杉本主幹研究員)考えだ。
【鉄を使い切る】
研究開発では、現在のスポット溶接との置き換えが可能である点を重視する。長い組み立てライン全体を変更するには多額のコストがかかり、海外工場への技術移転も困難が伴う。加えてマルチマテリアル車体とスチール車体の混流生産への対応も想定される。現在のスポット溶接の接合時間は、ロボットの動く時間も含めて3、4秒。摩擦接合もほぼ同様の時間にする。
「マツダの現在の商品ラインアップは、まずは鉄を有効に使い切ることを前提としている。その次の世代の軽量化技術として異材接合がある」と杉本主幹研究員は話す。将来の燃費規制の厳格化が予想される中、商品の性能を維持した上でさらに軽くするための新技術が求められている。「マツダの基本方針はすべてのお客さまに優れた環境安全性能を提供すること。量販車に技術を使わなければ意味がない」と開発を急いでいる。
【アルミと樹脂】
摩擦撹拌点接合技術は板材の接合箇所を上下から挟み込み、加圧しながら上側のピン状の工具を回転させる。これにより発生する摩擦熱で材料を軟化・流動させて点接合する。
マツダは2003年、同技術を使ったアルミ材同士の接合技術を開発した。抵抗溶接に比べて使用エネルギーの大幅な低減を実現。スポーツカー「マツダRX―8」のリアドアとボンネットに採用した。続いて05年には鉄とアルミ材の点接合技術を開発し、スポーツカー「ロードスター」のアルミ製トランクリッドと鋼板製ボルトリテーナーの接合に採用した。
同技術をアルミ材と、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などの樹脂との接合に応用する。国主導で13年に発足した新構造材料技術研究組合(ISMA)にも参画し、10年先を見すえた研究を進める。
一般的に車両重量のうち、ボディーシェルとクロージャー(ボンネット、ドア、ルーフなど)を合わせた車体部分が約40%を占める。この車体の軽量化に向けて、多様な素材を適材適所で使う「マルチマテリアル車体」の研究が欧州などでも進み、異種材料の接合技術の開発が重要ポイントとなっている。
【リベット不要】
マツダ技術研究所革新研究創成部門の杉本幸弘主幹研究員は「競合する接合技術と比べて、摩擦撹拌点接合技術のメリットは安価な点」と説明する。工具を半永久的に使えるほか、リベット(びょう)を使わずに接合するためコストを削減できる効果もある。板厚の影響も受けにくい。一方で「使う装置は従来と同じで対応できるが、相手は樹脂。工具の回転速度や工具の形状、時間、前処理の方法など最適な条件を見つけなければならない」という難題もある。
マツダでは10年間の研究期間を三つのステージに分け、最初のステージはメカニズム解析、接合時間の短縮など技術構想の実証に充てる。第2ステージは実際の部品に接合技術を使い、強度などを実証。最後の第3ステージはコストや品質保証などで量産面の課題を検証する。「部分的に早く使える技術は先行して実用化していきたい」(杉本主幹研究員)考えだ。
【鉄を使い切る】
研究開発では、現在のスポット溶接との置き換えが可能である点を重視する。長い組み立てライン全体を変更するには多額のコストがかかり、海外工場への技術移転も困難が伴う。加えてマルチマテリアル車体とスチール車体の混流生産への対応も想定される。現在のスポット溶接の接合時間は、ロボットの動く時間も含めて3、4秒。摩擦接合もほぼ同様の時間にする。
「マツダの現在の商品ラインアップは、まずは鉄を有効に使い切ることを前提としている。その次の世代の軽量化技術として異材接合がある」と杉本主幹研究員は話す。将来の燃費規制の厳格化が予想される中、商品の性能を維持した上でさらに軽くするための新技術が求められている。「マツダの基本方針はすべてのお客さまに優れた環境安全性能を提供すること。量販車に技術を使わなければ意味がない」と開発を急いでいる。
日刊工業新聞2014年10月13日 モノづくり面