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住宅各社が「ネット・ゼロエネルギータウン」競う

運命共同体意識が醸成され、住民のライフスタイルまで変わる!?
住宅各社が「ネット・ゼロエネルギータウン」競う

大和ハウス工業のスマートタウンに設置した太陽光発電所(三重県桑名市)

 環境配慮型の住宅団地「スマートタウン」の建設が盛んになってきた。省エネルギー住宅の普及を目指す住宅メーカーが先導し、自治体も地域のモデルコミュニティーとして実現を支援する。未来を先取りする暮らしは魅力的で消費者の関心も高い。各団地は最新技術を実証する場でもあり個性豊か。次々と新たな取り組みが生まれている。

 大和ハウス工業は7月、三重県桑名市に同社で5番目のスマートタウン「スマ・エコタウン陽だまりの丘」を開所した。共用部に太陽光発電所を設置。各戸の太陽電池や省エネ技術と合わせ、団地内でエネルギーを地産地消するネット・ゼロエネルギータウン(ZET)を実現した。

 共用発電所の売電収益を防犯灯、防犯カメラの運用や超小型モビリティーの維持などに使う。地元桑名市の伊藤徳宇市長も「まちの暮らしを良くする取り組みだ」と歓迎。1戸当たり月5000円超かかる管理組合費を賄うほか、入居者にも保守・修繕の積立金名目で収益が分配される。

 大和ハウスは次のスマートタウンを2016年夏にまちびらきする予定で、愛知県豊田市に建設する。一部街区では電力会社から電力を一括受電、各戸が作り出した電力も街区内で融通しあうマイクログリッドを構築する計画だ。

 一方、積水ハウスも東日本大震災で被災した宮城県東松島市に復興団地「スマート防災エコタウン」の建設を進める。団地と病院、公共施設を自営線で結ぶ国内初のマイクログリッド構築が目玉だ。

 電力は電力会社から一括受電するほか、太陽光発電設備や非常用発電機、蓄電池を備える。受電がなくても3日間は通常通りの電力供給を確保可能だ。

 8月に入居を始めたが、マイクログリッドの運用は16年3月を予定する。東松島市の阿部秀保市長は「自治体がエネルギーを確保する災害に強いまちづくりは、新しいモデルになる」と期待を寄せる。
 
 蓄電池や太陽電池、家庭用エネ管理システム(HEMS)を標準搭載するスマートハウス。全戸スマートハウスの団地から始まったスマートタウン。エネルギーを媒介に各戸がつながり、新たなコミュニティーの創造を目指す取り組みへと進化しようとしている。
(文=小林広幸)
日刊工業新聞2015年08月27日 建設・エネルギー・生活面
永里善彦
永里善彦 Nagasato Yoshihiko
 いま先進国や日本の各地で実証実験が行われているスマートシティのコンセプトは、ITを駆使し街全体の電力の有効利用を図り、環境共生都市を実現することにある。たとえば、住宅は省エネ家電で内装し、電気自動車を利用しての充電・放電システムを組み込み、再生可能エネルギーと蓄電池を併用し、各住宅が作り出す電力を街区内で融通しあうマイクログリッドを活用した都市システムを構築する。当然、住宅各社はその一翼を担う役割を持つが、とりあえず今日の稼ぎのために、上記の実証実験都市には拘らずに、各々がエネルギーを地産地消するネット・ゼロエネルギータウンの建設を競う。  エネルギーを媒介に各戸がつながり、新たなコミュニティーの創造を目指す取り組みは、住民の省エネ意識、環境意識を高め、運命共同体意識を醸成することにより、住民のライフスタイルに変革を迫ることになろう。

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