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NTTドコモ×NTTデータが開発する「AI電話」の正体

高度な業務を自動化する「IPA」の実現目指す
NTTドコモ×NTTデータが開発する「AI電話」の正体

AI―OCRのデモ

 NTTデータがRPA(ソフトウエアロボットによる業務自動化)の活用領域を拡大している。人工知能(AI)と組み合わせ、定型業務だけでなく非定型業務の自動化にも乗り出している。ツールを利用するという段階から一歩進み、より高度な業務を自動化する「IPA(インテリジェント・プロセス・オートメーション)」の実現を目指す。(文=川口拓洋)

 NTTデータがIPAの実現を目指す代表例が、NTTドコモと共同開発する「AI電話」だ。早ければ2019年度中にもサービス提供を開始する。既存の自動音声システムでは「1」「2」「3」などのプッシュボタンに役割を与え利用者が選択するが、企業の担当者を呼び出すには社員数に応じて番号を振り分ける必要があるほか、毎回「阿部なら1番、伊藤なら2番‥」と自動で読み上げる音声を確認しなければならず、実現は現実的ではない。

 一方、AI電話では利用者が担当者の氏名を音声で呼ぶことで、AIが判断し、通話に入る。留守の場合でも担当者の予定表をRPAが確認し、つながりやすい時間帯も提示する。同様に金融機関による未収納者への連絡もRPAが統合業務パッケージ(ERP)内の関連リスト情報を確認し、AI電話から自動で発信できる。

 災害時における安否確認も住所録をRPAがピックアップし、AI電話による自動発信が可能。オペレーターの負担を軽減できるほか、スマートフォンを所持していない利用者にもデジタルサービスを提供できる。

 さらに、AI―光学式文字読み取り装置(OCR)とRPAの連携は、実用化が目前に迫る。NTTデータではLGWAN(行政専用閉域ネットワーク)を活用し、自治体が保有する大量の紙帳票を基幹システムに登録する「AI―OCRソリューション」を10月に発売する予定だ。

 RPAは17年頃から金融機関で導入が進み、18年には製造業の生産管理の自動化などでも活用例が増えてきた。最近は行政や病院などでも導入が進んでいる。NTTデータではユーザー自身が自動化ツールを作れる国産RPA「ウインアクター」を手がける。14年の提供開始以来、約3000社が導入した。

 手を加えられたRPAが保証なく出回る“野良化”を防ぐサーバー管理が可能な「ウインディレクター」も17年の提供開始以来約100社が導入している。デジタルソリューション統括部RPAソリューション担当の中川拓也課長は「RPAは消費者向け商品ではないが、スマートフォンと同じような普及率を示している。今後は1人1台、RPAを活用する時代になる」と期待する。
日刊工業新聞2019年7月5日

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