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切削工具メーカー、業績一息も次の攻めどころに照準

切削工具メーカー、業績一息も次の攻めどころに照準

住友電工ハードメタルのバインダレス立方晶窒化ホウ素(CBN)製工具

切削・研削工具6社の2020年3月期連結業績見通しは4社が増収を見込むが、増収幅は縮む。米中貿易摩擦や半導体・IT関連の一服感の影響は避けられない。ただし市場は全体では堅調とみて、下期の需要回復も期待する。ほぼ横ばいを除く大幅な営業減益は、営業利益予想を公表する5社中2社にとどまる。

 三菱マテリアルは販売が増えるが、成長投資で労務費も増え営業利益は横ばい。住友電気工業も超硬工具事業の営業利益を、実数は非公表だが「横ばい」とみる。井上治社長は「引き続き受注は好調」とし下期の中国経済回復を期待する。

 旭ダイヤモンド工業は得意としていた太陽光発電ウエハーの切断用ワイヤの受注が中国の国策による競合激化で大幅減。ノリタケカンパニーリミテドは世界の景気減速を懸念し、自動車向けを中心に研削砥石(といし)の需要を慎重に見る。

 ダイジェット工業は3月に本格稼働した超硬工具用合金工場(三重県伊賀市)が増益に寄与。前期の原材料価格上昇も「今期の影響は少ない」(生悦住歩社長)とみる。日進工具は18年秋に米中貿易摩擦で電子部品向けの小径工具需要が減速、20年3月期は需要がやや停滞すると見通す。
                  

日刊工業新聞2019年5月21日


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航空機向け攻勢、難削材加工が進化


 工具メーカー各社が航空機部品に適した工具の提案に力を入れる。自動車などに次ぐ柱にするため、従来を大きく上回る加工品質の新製品を投入する。開催中の「日本国際工作機械見本市(JIMTOF2018)」では、航空機向けをはじめとする画期的な新製品がめじろ押しだ。

 住友電工ハードメタル(兵庫県伊丹市)は自社で材料開発した、結合材を一切含まないバインダレス立方晶窒化ホウ素(CBN)製の工具を、航空機分野で使われるチタン合金や耐熱合金の加工用に訴求する。チタン合金を毎分150メートルの高速加工した場合、耐摩耗性は超硬工具比53倍の長寿命。チタン合金と溶着しにくく加工面をきれいに仕上げられるため、医療用人工骨の仕上げにも有効。旋削用のほか、ミーリング用の工具もそろえた。

 京セラは航空機向けで工作機械大手とタイアップ展示。DMG森精機の5軸加工機に搭載したソリッドエンドミルは、アルミニウム合金製の機体部品を加工する。オークマの複合加工機に取り付ける特注ソリッドエンドミルは、ニッケル素材の耐熱合金製タービンディスクの加工用だ。

 機械工具事業本部の小倉健販売促進部責任者は「航空機向け工具は顧客の要望に応じた特注品。グローバルな生産体制も強みだ」と自信を見せる。

 ダイジェット工業は金型や自動車部品向けに強いが、航空機向けもランディングギアなど足回り部品で実績がある。今後はチタンなど難削材向けに、刃先交換式ボールエンドミルや肩削りカッターなど、高硬度材の荒加工や中仕上げ加工で生産性向上に貢献する。

 三菱マテリアルのチタン合金仕上げ加工用バレルエンドミルは、航空機エンジン部品などの加工を想定。先端部と外周部にバレル(たる)形状を採用し、先端部で面取り加工、外周部で翼面加工といった複合加工に対応する。難削材の旋削加工用インサート(刃先交換チップ)の商品群も展示した。

 また、工具の長寿命化、高効率化の提案も目立った。不二越は新ブランドの超硬汎用ドリルを披露。工具寿命が他社製品の2倍というのが特徴で、初日1日の発表会には、100人以上が詰めかけた。北山恭工具事業部長は「今までと違うレベルの売り上げを狙う」と意気込む。

 タンガロイ(福島県いわき市)は次世代鋼旋削加工用化学気相成長(CVD)材種を紹介。被膜層の中の酸化アルミを厚膜化するなどの新技術により、従来品の2倍以上の耐摩耗・耐欠損性を実現した。連続から断続まで幅広い加工条件をカバーする。19年夏までに各種タイプを順次発売する。

 日進工具は1日に発売した2製品が一押しだ。銅電極加工用ロングネックエンドミルはスクエアタイプ。従来のボール型に比べて2次元加工に向き、長寿命だ。アルミ専用エンドミルは、3枚刃・3倍刃長を採用して加工速度を上げた。

 OSGの目玉も、19年春発売の3枚刃のドリルだ。08年に3枚刃を投入したが、スラスト抵抗が高いことが普及の課題だった。新製品は2枚刃並みに抵抗を抑えた。刃先の形状を工夫し、切り粉を丸めて排出できるのも特徴だ。2枚刃より加工時のバランスが良いという長所もあり、3枚刃時代の到来が期待される。

日刊工業新聞2018年11月6日


※内容は掲載時のもの

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