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各省庁も本腰、「SDGs」次の主戦場は中小企業だ!

地域企業のビジネス機会創出をめざす
各省庁も本腰、「SDGs」次の主戦場は中小企業だ!

外務省などが企業向けのSDGs情報を提供している

 持続可能な開発目標(SDGs)が2016年にスタートして3年。大手企業を中心に産業界に浸透し、目標達成に貢献すると宣言したり、経営に採り入れたりする企業が増えている。さらに政府は中小企業への普及を“主戦場”と位置付け、産業界全体への浸透を推進する。SDGsが新しいステージに入った。

 SDGsは15年9月の国連総会で採択された16―30年の世界目標。社会、環境、経済の課題を解決した“未来像”を描いた。健康、教育、エネルギーなど分野別に17のゴールと具体策を示す169のターゲットがある。現状と“未来像”とのギャップを埋めるため、企業にビジネスの力による課題解決を要請しているのが大きなポイントだ。

 SDGsは国連の目標だが、企業も参考にできる。環境省が中小企業の目線から編集した「SDGs活用ガイド」は、企業活動に四つのメリットがあると解説する。

 一つが「企業イメージの向上」だ。経営理念や事業目標をSDGsを使って発信すると、社会に貢献する企業として評価が高まる。メタウォーターの中村靖社長は「世界目標の6番を担当する会社」と自社を紹介している。SDGsの目標6は「水の衛生」であり、同社の本業の水処理事業が該当する。中村社長は自社の存在意義を学生などに伝えるツールにSDGsを活用する。

競争で優位


 二つ目は「新たな事業機会の創出」。大川印刷(横浜市戸塚区)は環境負荷を抑えた印刷などをSDGsで訴求し、18年度だけで50社以上の新規顧客を獲得した。

 三つ目のメリットが「社会の課題への対応」。SDGsのターゲットを読むと経営リスクが浮かび上がる。例えば「30年までに廃棄物の発生を大幅に削減する」と書かれており、廃棄物抑制に努めないと“SDGsに逆行する企業”として批判される恐れがある。

 四つ目は「生存戦略になる」。SDGsを使って企業価値を発信すると社会的評価を高め、顧客や人材の獲得機会が広がる。SDGsの導入にルールはなく使い方はさまざまだが、理解して活用すると競争で優位になる。

外務省・甲木浩太郎氏に聞く「参考情報を提供」


 外務省はホームページに「ジャパンSDGsアクションプラットフォーム」を開設し、企業に参考情報を提供する。先進的な団体への表彰制度「ジャパンSDGsアワード」なども実施し、企業によるSDGs推進を後押ししている。政府によるSDGs普及策のまとめ役である外務省国際協力局地球規模課題総括課の甲木浩太郎課長に、産業界への浸透などについて聞いた。

 ―国内企業の取り組みの評価は。
 「企業が力強く推進し、社会でのSDGsの認知度が上がった。ESG(環境・社会・企業統治)投資をはじめとする金融のうねりもあり、上場企業はSDGsに取り組むと企業価値が高まるようになっている」

 ―中小企業のSDGsに対する認知度が低いです。
 「政府として中小企業への普及が主戦場だ。地域の企業もSDGsによって評価が高まり、ビジネス機会が生まれる。地銀からも融資を受けられる。地銀もESGの評価が向上するので、地域経済に好循環となる」

 ―中小企業への浸透策は。
 「ジャパンSDGsアワードには、中小企業の活動を見える化する狙いもある。アワードを受賞した中小企業は他社の事例となる。特に受賞企業の社長が語る“生身の情報”は、中小企業が共感しやすい」

 ―SDGsにおける日本の課題は。
 「女性の社会参画があげられる。アワードを受賞した三承工業グループ(岐阜市)は、子連れ出勤ができる環境を整えた。すると他社に勤めていた女性が転職してくるなど、地方企業も優秀な人材を確保できるようになった」

 ―9月には初のSDGs首脳級会合が開催されます。
 「日本のSDGs企業をブランディングして発信したい。日本の評価が高まると、海外から健全な経営資源を呼び込めるはずだ」
(聞き手・松木喬)

「SDGs勉強会」を開催いたします。


 企業活動に役立つSDGsとは何か? 経営・事業にどのような効果があるのか? SDGsをどのように始めたらいいのか? といった皆様の疑問に答えます。3回目となる今回のテーマは「Think globally act locally.」。本記事の執筆者である日刊工業新聞編集委員の松木喬なども講演します。積極的なご参加をお待ちしています。

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日刊工業新聞2019年4月5日

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