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17年ぶり復活の「スープラ」はライドシェア時代の生き残り策か?

トヨタ×BMWの初モデル、「らしさ」にこだわる
17年ぶり復活の「スープラ」はライドシェア時代の生き残り策か?

新型「スープラ」はBMWとの協業の成果でもある

 トヨタ自動車が新型「スープラ」を発売した。同社の代表的なスポーツカーで2002年に生産を終了して以来17年ぶりの復活となる。提携関係にある独BMWと開発した初のモデルで、車や運転の楽しさを訴求する。外部資源の活用のほか、復刻パーツ販売といった新たな試みも盛り込んでおり、従来のスポーツカー事業から変化が見られる。スープラ復活は、ライドシェア時代に向け、市販車のあり方を変える存在にもなりそうだ。

「車の持つ楽しさを取り戻し、車好きを醸成したい」。友山茂樹副社長は、復活の思いをこう説明する。新型スープラは、市販車のスポーツカーブランド「GR」初となるグローバルモデル。直列6気筒エンジンと後輪駆動(FR)を採用し、ハンドリング性能や精密な車両コントロールなど「スープラらしさ」にこだわった。

 開発面で従来と大きく異なる点は、外部資源の活用だ。開発ではBMWと協業し、主にトヨタが企画とデザインを、BMWが設計を手がけた。生産はオーストリアのマグナ・シュタイヤーが担当する。友山副社長は、スポーツカーの開発には、「いろんな自動車メーカーとの車台や部品の共有化を考えつつ、(求める走行性能を実現する)独自のキーパーツも使う二刀流が必要だ」と明かす。

 さらにGRブランドで復刻パーツ事業を始めることも発表した。例えばスープラの世界累計販売台数は約29万台で、根強いファンがいる。パーツ販売で継続的に稼ぐ「リカーリング型」のビジネスモデルを実現できれば新たな収益源も期待できる。大塚友美GR統括部長は「まずはスープラを対象に、年内には実現したい」と話す。

 「MaaS(乗り物のサービス化)」が進みライドシェアが普及すれば、車はコモディティー化し、車を保有する意義がなくなるとも言われる。しかしスープラのチーフエンジニアの多田哲哉主査は「趣味性の高い車の人気は根強く、スポーツカーは成長産業の一つとも言えるのではないか」と分析する。

 友山副社長は「次の100年も車を徹底的に面白いものにする」と意気込む。開発や生産はコストを抑えつつ、車好きの裾野を広げて収益面でも好循環を生み出すことを狙うスポーツカー事業。ライドシェア時代の自動車メーカーの生き残り策として、一つのヒントとなりそうだ。

(取材・政年佐貴恵)
日刊工業新聞2019年5月20日(自動車・輸送機)

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