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日産の急速なコスト削減、サプライヤーの業績を直撃

日産の急速なコスト削減、サプライヤーの業績を直撃

日産の西川広人社長

 日産自動車への供給が多い部品メーカー6社の2020年3月期連結業績は5社が営業減益を見込む。最大の要因は主要取引先とする日産の販売不振だ。特に北米での販売減が業績に重くのしかかる。苦境に立たされる中、生産性や収益性を高めようとしている。

 米国市場は成長が鈍化し需要が変化している。ヨロズの佐草彰副社長は「新型セダンに期待しているが、まだ効果が薄い」といい、スポーツ多目的車(SUV)への需要シフトに苦しめられている。6社中、営業利益見通しの下げ幅が最大となっている。

 アルファも北米の自動車部品事業の低迷が続き、営業減益予想。ユニプレスは北米だけでなく車の電動化などで「事業環境が厳しくなる」(担当者)といい、技術の進展が各社の収益悪化を招いている。

 中国や欧州などでも市場に不透明感が漂い、規模の拡大があまり望めない中、各社は収益体質の改善に動く。河西工業は北米地域の拠点再編を検討。渡辺邦幸社長は「安定的な利益体制を構築するためには1―2年はかかる」と話す。

 パイオラックスは体制の合理化効果を引き出して、限界利益の縮小影響を最小限に抑制する。唯一営業増益を見込むファルテックも、英国のEU(欧州連合)離脱の影響が懸念されている英国事業の合理化を進める方針だ。

 各社の主要取引先である日産は23年3月期を最終年度とする中期経営計画を下方修正した。日産は、米国事業の立て直しや生産体制と投資効率の見直しに2―3年がかかるとしている。

 部品各社は、日産の受注増による事業成長はしばらく見込めない可能性がある。厳しい状況の中で稼げる体質を構築できるか、正念場を迎えている。
                      
日刊工業新聞2019年5月17日
中西孝樹
中西孝樹 Nakanishi Takaki ナカニシ自動車産業リサーチ 代表
生産性10%改善、余剰能力10%削減に取り組む日産自動車の大規模な事業再構築がこの先2年程度で可及的に推進される。この余波は日産向け比重の高いサプライヤー業績を直撃している。生産能力は750万台から10%程度削減され、680万台程度まで圧縮される。 日産は将来的に600万台前後の生産台数を目指すとしている。これが実現できなければ、 サプライヤー業績 への圧迫は更に厳しいものとなるだろう

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