「入管法」改正、外国人材の受け入れ急ぐ中小製造業
課題は日本人との給与・待遇の格差是正
人手不足や採用難に直面する中、4月に受け入れ拡大が始まった外国人労働者の雇用や検討を本格化する中小企業が多いことが分かった。全国の中堅・中小企業(経営者)から得た有効回答96社のうち、現在の正社員数を「不足」と回答した企業が55社、全体の57・3%となった。外国人労働者を「すでに採用もしくは採用を決定」「検討中」との回答が計60社、全体の62・5%を占めた。
最近の雇用状況や、4月に施行した改正出入国管理・難民認定法(改正入管法)により外国人労働者の受け入れが拡大されたことを受け、アンケートでは中小企業に人手不足や外国人労働者の採用などの見解について聞いた。
現在の正社員数について「適正」とする企業は41社(全体の42・7%)だった。一方、「不足」と回答した55社に人手不足の対策(複数回答)を尋ねたところ、「業務の効率化」が36社と最も多かった。次いで「省力化投資」「定年延長や再雇用」がそれぞれ29社、「採用対象を拡大」の22社、「女性活躍」の21社、「外部委託の推進」「待遇改善」のそれぞれ19社と続く。
ただ、このような対策の多くは新規採用によるものではなく、既存の人員や体制を維持拡大したものが多い。それだけ人材の採用に苦慮している企業が多いと言える。採用活動についての課題(複数回答)については現在の正社員数が「不足」企業のうち「求める人材が来ない」が39社、次いで「募集しても応募がない」の26社、「コストがかかりすぎる」の14社と続き、いずれも「適正」企業が答えた割合を上回った。
人手不足の状況を「あきらめている」(十二慎一郎タカオカメガ社長)や「仕方がない」(大野正博中部製作所社長)と見る向きがある一方、ねばり強く状況を改善しようとする動きもある。「採用活動を続けていくと同時に、自動化・省力化も進めていく」(中山慎一ナカヤマ精密社長)。「採用できた人材を地道に育てるしかない。業務全般を見直し、業務支援ツールなどで生産性向上を図るよい機会」(金子勝ミシマックス社長)との意見も出た。
正社員数が適正とする企業の中には独自の取り組みによって限られた人員の中で業務を推進している。「高齢者の雇用や活用を考えるべきだ。先日採用した人は65歳。最高齢で84歳の人が働いているがみんな元気で頑張ってくれている」(石井幹人遠州工業社長)という企業がある。今後、中小企業でも「IoT(モノのインターネット)化を進め、ルーチンワークの自動化を図り、少人数で仕事ができる」(神取勇カンドリ工業社長)という指摘もある。
とはいえ、人手不足の解消に向けて外国人労働者の採用を真剣に考える企業も増えている。アンケートで外国人労働者の採用に関心はあるかを尋ねたところ、「すでに採用もしくは採用を決定」「検討中」がそれぞれ30社(全体の31・3%)となり、合わせると全体の6割を超えた。
「外国人労働者の採用は製品のノウハウ流出につながりかねないので行うつもりはない」(坂井隆一中国興業社長)との意見もあるが、「採用しない」とする企業は全体で36社(同37・5%)にとどまった。4月の改正入管法の施行も追い風となっているようだ。
すでに採用もしくは採用を決定した企業に受け入れの準備内容(複数回答)を尋ねたところ、「教育制度の拡充」が13社で最も多かった。次いで「福利厚生の拡充」の6社、「規則変更」の5社、「自治体との連携」の4社と続いた。「留学生だったので日本語など問題なかった」(モリタ東京製作所)など日本での生活に慣れた外国人材の採用が目立った。そのため「特別な準備はしなかった」(早川ゴム)、「日本人採用と同じ制度で対応」(近畿工業)といったケースも多かった。
すでに採用もしくは採用を決定したと回答した30社のうち、現在の正社員数が不足とする企業は19社と半数を上回った。すでに海外での人材採用に実績がある企業では「日本では高度人材の採用は難しいが、タイでは採用が順調に進んでいる」(染谷幸雄日本一社長)といった声もある。
外国人労働者への期待が高まる中、受け入れる企業側も「多様な人材が働くことができるよう働き方の多様化と働く場としての魅力を高めていく」(末松仁彦バーテック社長)と社内体制の整備に力を入れる。採用にあたっては「日本人と給与面、待遇面に差をつけず、できる人は昇給していくべきだ。会社としては外国人が働きたいと思えるような会社にすることが大事だ」(浦竹重行東亜成型社長)と考える。
外国人材などの採用は自助努力を原則とする一方、政府などに「社会保険制度を見直して高齢者、女性、外国人がより自由に働ける状態にしてもらいたい」(田頭和憲サカイテック社長)との注文もあった。「外国人労働者の受け入れでは補助金があるとありがたい」(根岸貴史大塚製作所社長)という意見も出た。人材が充足している企業でも「外国人材の雇用に関する一層の規制緩和、門戸開放を期待する」(佐藤正太郎日光金属社長)との声もあった。
アンケートを通じて人手不足がやや解消されつつあるという見方もある中で、依然として半数以上の企業が人手不足に悩んでいる実態が明らかになった。多くの企業が新規採用と並行して人材の多様化、自動化や省力化などで乗り切ろうとする実態も分かった。外国人労働者に対する関心も高く、受け入れにあたり日本人と同じ待遇にするための制度改正や公的補助の必要性も浮き彫りとなった。
厳しさ続くも・・・
最近の雇用状況や、4月に施行した改正出入国管理・難民認定法(改正入管法)により外国人労働者の受け入れが拡大されたことを受け、アンケートでは中小企業に人手不足や外国人労働者の採用などの見解について聞いた。
現在の正社員数について「適正」とする企業は41社(全体の42・7%)だった。一方、「不足」と回答した55社に人手不足の対策(複数回答)を尋ねたところ、「業務の効率化」が36社と最も多かった。次いで「省力化投資」「定年延長や再雇用」がそれぞれ29社、「採用対象を拡大」の22社、「女性活躍」の21社、「外部委託の推進」「待遇改善」のそれぞれ19社と続く。
ただ、このような対策の多くは新規採用によるものではなく、既存の人員や体制を維持拡大したものが多い。それだけ人材の採用に苦慮している企業が多いと言える。採用活動についての課題(複数回答)については現在の正社員数が「不足」企業のうち「求める人材が来ない」が39社、次いで「募集しても応募がない」の26社、「コストがかかりすぎる」の14社と続き、いずれも「適正」企業が答えた割合を上回った。
粘り強く改善続ける
人手不足の状況を「あきらめている」(十二慎一郎タカオカメガ社長)や「仕方がない」(大野正博中部製作所社長)と見る向きがある一方、ねばり強く状況を改善しようとする動きもある。「採用活動を続けていくと同時に、自動化・省力化も進めていく」(中山慎一ナカヤマ精密社長)。「採用できた人材を地道に育てるしかない。業務全般を見直し、業務支援ツールなどで生産性向上を図るよい機会」(金子勝ミシマックス社長)との意見も出た。
正社員数が適正とする企業の中には独自の取り組みによって限られた人員の中で業務を推進している。「高齢者の雇用や活用を考えるべきだ。先日採用した人は65歳。最高齢で84歳の人が働いているがみんな元気で頑張ってくれている」(石井幹人遠州工業社長)という企業がある。今後、中小企業でも「IoT(モノのインターネット)化を進め、ルーチンワークの自動化を図り、少人数で仕事ができる」(神取勇カンドリ工業社長)という指摘もある。
改正入管法施行、6割が採用「前向き」
とはいえ、人手不足の解消に向けて外国人労働者の採用を真剣に考える企業も増えている。アンケートで外国人労働者の採用に関心はあるかを尋ねたところ、「すでに採用もしくは採用を決定」「検討中」がそれぞれ30社(全体の31・3%)となり、合わせると全体の6割を超えた。
「外国人労働者の採用は製品のノウハウ流出につながりかねないので行うつもりはない」(坂井隆一中国興業社長)との意見もあるが、「採用しない」とする企業は全体で36社(同37・5%)にとどまった。4月の改正入管法の施行も追い風となっているようだ。
すでに採用もしくは採用を決定した企業に受け入れの準備内容(複数回答)を尋ねたところ、「教育制度の拡充」が13社で最も多かった。次いで「福利厚生の拡充」の6社、「規則変更」の5社、「自治体との連携」の4社と続いた。「留学生だったので日本語など問題なかった」(モリタ東京製作所)など日本での生活に慣れた外国人材の採用が目立った。そのため「特別な準備はしなかった」(早川ゴム)、「日本人採用と同じ制度で対応」(近畿工業)といったケースも多かった。
すでに採用もしくは採用を決定したと回答した30社のうち、現在の正社員数が不足とする企業は19社と半数を上回った。すでに海外での人材採用に実績がある企業では「日本では高度人材の採用は難しいが、タイでは採用が順調に進んでいる」(染谷幸雄日本一社長)といった声もある。
職場の魅力磨く/給与・待遇面で日本人との格差是正
外国人労働者への期待が高まる中、受け入れる企業側も「多様な人材が働くことができるよう働き方の多様化と働く場としての魅力を高めていく」(末松仁彦バーテック社長)と社内体制の整備に力を入れる。採用にあたっては「日本人と給与面、待遇面に差をつけず、できる人は昇給していくべきだ。会社としては外国人が働きたいと思えるような会社にすることが大事だ」(浦竹重行東亜成型社長)と考える。
外国人材などの採用は自助努力を原則とする一方、政府などに「社会保険制度を見直して高齢者、女性、外国人がより自由に働ける状態にしてもらいたい」(田頭和憲サカイテック社長)との注文もあった。「外国人労働者の受け入れでは補助金があるとありがたい」(根岸貴史大塚製作所社長)という意見も出た。人材が充足している企業でも「外国人材の雇用に関する一層の規制緩和、門戸開放を期待する」(佐藤正太郎日光金属社長)との声もあった。
アンケートを通じて人手不足がやや解消されつつあるという見方もある中で、依然として半数以上の企業が人手不足に悩んでいる実態が明らかになった。多くの企業が新規採用と並行して人材の多様化、自動化や省力化などで乗り切ろうとする実態も分かった。外国人労働者に対する関心も高く、受け入れにあたり日本人と同じ待遇にするための制度改正や公的補助の必要性も浮き彫りとなった。
日刊工業新聞2019年5月2日(中小・ベンチャー)