ニュースイッチ

GW、酒を求めて各地を彷徨おう

GW、酒を求めて各地を彷徨おう

カーブドッチワイナリーの木樽の熟成庫

**新潟市・カーブドッチワイナリー こだわりのワイン造り見学
 新潟市街地から車を南西方向に走らせると、1時間程度で海と山に囲まれた広大なブドウ畑にたどり着く。その一角にあるのが、高品質ワインを手がける「カーブドッチワイナリー」。特に人気を博しているのが、ワイン造りの過程を見学できるワイナリーツアーだ。

 まず案内されるのはブドウ畑。カーブドッチワイナリーのショップスタッフである柴本博さんが「ワインは地酒。その土地になじんだ味を出す」と話すように、水はけの良い砂質の土壌を生かした独自のワインを生み出している。醸造室や木樽の熟成庫、瓶詰めしたワインを保管するセラーを巡った後、締めくくりにワイナリーショップ内のカウンターでさまざまな品種を試飲できる。

 敷地内には結婚式場もある。挙式したカップルにサインしてもらったワインを貯蔵し、10年後の結婚記念日に届けるサービスも実施。熟成させたワインとともに挙式の感動を味わってもらおうと昨年から始めた。

 カーブドッチがこの地でワイン造りを始めたのが1992年。現在では五つの醸造所が集まるワイン産地へと発展した。新潟県観光協会の早福亮常務理事は「新潟県といえば日本酒の名産地のイメージだが、ワインの国内外の評価も高い」と話す。ワイン醸造に対する強いこだわりと楽しみ方の創出は、これからも多くの人を引き寄せる原動力になっていくはずだ。
(新潟・古谷一樹)

【アクセス】▽新潟市西蒲区角田浜1661、0256・77・2288▽自動車では、北陸自動車道巻潟東ICより角田浜方面へ約20分。電車では新潟駅からJR越後線で内野駅下車し、内野駅よりタクシーで15分。ワイナリーショップの営業時間は10―17時。ワイナリーツアーは11時から60―90分程度で、2日前までの事前予約が必要。

日刊工業新聞2017年9月22日



南大東島・ラム酒工場−甘い香り漂う“空港”


グレイス・ラムの本社工場。旧空港の建物や看板がそのまま残る

 「南大東空港」と掲げられた古い建物のドアを開けると、航空会社の看板があり「本当にここなのか」と一瞬ためらうが、漂う甘い香りで目的の場所と確信する。実はこの場所、20年前まで実際に空港だった。しかし今、ここから飛び立つのは蒸留酒・ラムだ。

 沖縄本島から東に約360キロメートル。南大東島でラム「コルコル」を製造販売するのがグレイス・ラム(沖縄県南大東村)だ。赤土から力強く伸びるサトウキビの畑の中にある本社工場は旧空港施設の再利用で、見学も可能。事務所は航空会社のカウンター、瓶詰めは待合室、醸造・蒸留・貯蔵は滑走路側に増設した工場で行う。

 2004年の設立から「3人だけ空港と間違えた」と玉那覇力工場長は笑う。沖縄といえば泡盛が有名だが、製糖の副産物・糖蜜を原材料に使うラムも“地酒”だ。サトウキビの搾り汁で造る世界的に希少な「アグリコール」も製造する。小さな工場だが「ここ1年で急に売れ行きが良くなった」そうだ。

 「離島の魅力は生活と文化の密着。多様な島の中から、きっと好みの島が見つかる」。沖縄観光コンベンションビューロー・渡辺翔さんのそんな言葉を思い出しながら、「ラムは島の酒さー」と自慢げな居酒屋店主に2杯目のラムを注文する。(那覇・三苫能徳)

【アクセス】▽沖縄県南大東村旧東39の1、09802・2・4112▽那覇空港から南大東空港まで約1時間10分(直行便)、海路は那覇泊港から15時間(同)。空港から工場までは車で約10分。公共交通やタクシーはなく、レンタカーなどを利用する。工場見学は事前連絡が必要。

日刊工業新聞2017年7月7日



東京都立川市、歴史と地ビール味わう無門庵


旅館からリニューアルした懐石料理店「無門庵」本館

 明治時代の小説家、樋口一葉代表作の一つである「たけくらべ」にちなんで名付けられた地ビールが、東京都立川市郊外の閑静な住宅街で作られている。武蔵野台地の地下100メートルから吸い上げた天然水を使用。おいしい水と、酵母を生かした米国式のビールが楽しめるのが、ブルワリーに隣接した懐石料理店「無門庵」だ。

 無門庵は創業者の小林実さんが1937年(昭和12年)に旅館として創業、自身の俳号「無門」から名付けた。門はあっても仕切りがなく、誰でも気軽に憩いの場として提供する意味がある。太平洋戦争中は陸軍将校や少年航空兵が、戦後は米軍が宿泊先として利用して繁盛した。87年に旅館としての幕を閉じたが、昭和の時代を見つめた文化的施設がなくなることを惜しむ声が多く寄せられ、91年(平成3年)料亭として営業を再開した。

 本館をリニューアルする時に金庫を解錠したところ、樋口一葉自筆の“たけくらべ”の最終稿が見つかった。小林敬三支配人は「いかめしい金庫で、これまで開かずの金庫だった。創業者は文学の素養があり、最終稿があったのだろう」と話す。

 料亭として再出発した無門庵は、たけくらべの世界をイメージしてリニューアルを施した。これから庭園のあじさいが楽しめる絶好の季節を迎える。立川商工会議所の地域・産業振興課の村野信二課長は「甘みがある地ビールを、歴史とともに味わってほしい」としている。(成田大典)

【アクセス】▽立川市錦町1の24の26、042・529・2323▽JR南武線西国立駅から徒歩1分▽中央道国立府中インターから車で10分▽懐石料理店「無門庵」は年中無休(ただし年末年始は休み)。

日刊工業新聞2018年6月8日



埼玉 秩父市・兎田ワイナリー 地域特産のワインを楽しむ


秩父ファーマーズファクトリーの「兎田ワイナリー」

 自然豊かな埼玉県秩父市に広がる畑の中に、目を引く建物がある。ブドウ栽培からワイン醸造、販売まで行う、秩父ファーマーズファクトリーの「兎田(うさぎだ)ワイナリー」だ。畑や工場を見学し、ワインも試飲できる体験型の施設で、深田和彦社長自ら見学客への案内も行っている。

 2万平方メートルの畑に5500―6000本のブドウの木が広がる。ブドウ畑のその先には、石灰岩の産地として有名な武甲山の白い斜面も見え、空気も心地よい。昼夜の寒暖差が大きく、「糖分の高いブドウになる」(深田社長)。

 赤ワインとなるメルローやマスカット・ベーリーA、富士の夢、白ワインになるシャルドネ、甲斐ブランの5種類、7トンを自社畑で生産する。販売するワインは約12種類で、うち8種類に「秩父」の名前を冠している。

 1日4回、畑・工場見学を受け付けている。大小合わせて15のタンクが居並ぶ姿は圧巻。貯蔵庫にはワイナリーらしい樽(たる)が25本。タンクや樽に近づくと、ほのかに甘い香りがする。季節によっては、醸造作業や瓶詰め作業の見学もできる。

 兎田ワイナリーから徒歩3分ほどの距離の「釜の上農園村レストラン」でワインの試飲が楽しめる。ワインとの相性が良い埼玉産の食材を使った欧風料理などを提供、ワインの販売も行う。「秩父のワインを楽しんでもらうためにできることは何でもやりたい」という深田社長。今後の兎田ワイナリーの展開に期待はふくらむ。(さいたま・石井栞)

【アクセス】▽秩父市下吉田字兎田3720▽秩父鉄道皆野駅からタクシーで約20分▽秩父鉄道秩父駅から西武観光バス吉田元気村行きで約40分、吉田上町下車、徒歩約10分。入館料・試飲・ワイン工場見学は無料

日刊工業新聞2018年2月23日

編集部のおすすめ