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アマゾンの倉庫ロボの問題点とは?

Kyouto Robotics社長・徐剛③
 物流において、物を動かす動作は基本的に、搬送と移載(ピッキング)の二つの動作に分解できる。人間もロボットも同じ。物を搬送するロボットは「搬送ロボット」「無人搬送車」と呼ばれる。略称はAGV(Automated Guided Vehicle)だ。

 一方、物をピッキングするロボットは、3次元ビジョンで物を位置決めすることが必要となり、知能ピッキングロボット(Intelligent Picking Robot)と呼ばれる。そして、この二つを合体させ、搬送も移載もできるロボットが開発されつつある。それが移動ピッキングロボット(Mobile Picking Robot)である。重い物を搬送してくれる搬送ロボットは重い物を移載するピッキングロボットと同様に高い価値がある。

 掃除ロボットも自動運転車もある種のAGVと考えられる。それぞれ次の三つが最低限の構成要素として持つからである。それが(1)環境における自己位置を推定する(2)障害物を回避しながら目的地に向かう経路を計画する(3)計画された経路に沿うように自らの動きを制御する―である。

 (1)は、全地球測位システム(GPS)が使える環境ではGPSが最も安いソリューションである。だが室内やトンネル内ではGPSが使えず、環境の3次元地図を使うことが必要となる。その際は自己位置推定と環境地図製作を同時に行う「SLAM」技術を使うことが一般的である。

 SLAMは自ら環境を観測しながら3次元地図における自己位置を推定する。また、自己位置を推定しつつ観測した環境の3次元形状を3次元地図に加えていく処理を絶えず行う技術である。掃除ロボットもAGVも現状は2次元断面レーザスキャンを使うことが多い。だが、自動運転車で使われる微小電気機械システム(MEMS)型LiDAR(ライダー)の3次元レーザースキャンが今後安くなるためAGVでも活用する可能性が高い。

 ピッキングロボットは固定して使うのでロボット間協調は基本的にないが、AGVは移動するので衝突の可能性がある。AGV群制御が重要な技術課題となる。

 また、荷物をAGVに載せたり、目的地に到着した荷物を下ろしたりする移載作業は人間が担うことが多い。だが、移動するピッキングロボットなら自動化できる。技術的課題の解決と原価低減が実用化に必須である。

 米アマゾン・ドット・コムの倉庫はAGVが既に万単位で稼働する。だが、ピッキングする人間の近くにAGVが商品棚を丸ごとに運ぶ形態は理想的ではない。移動ピッキングロボットがソリューションになる日が待ち望まれる。(全7回、毎日掲載)
日刊工業新聞2018年9月21日(ロボット)

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