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産業用ロボットにできず、ピッキングロボットにできること

Kyoto Robotics社長・徐剛①
 気鋭のロボットベンチャーの経営者にロボット産業の課題を語ってもらうこのシリーズ。今回はKyoto Robotics(キョウトロボティクス、滋賀県草津市)社長の徐剛氏が登場。

 工場ではロボットが大活躍している。インターネット通信販売の急成長により、倉庫内のピッキング作業が急激に増えている。ピッキング作業は深夜にも行われる。同時に人手不足の深刻化により、庫内作業者の採用が難しくなっている。そんな中で、倉庫におけるピッキング作業のロボット化が強く求められている。一方で、産業用ロボットは自動車や電機などの工場でたくさん活用されているのに倉庫ではさほど活用されていない。それはなぜか。

 従来の産業用ロボットは、ティーチング(動作教示)で覚えた動作を繰り返すだけであった。工場は同じものを規格通りに作るし、決まった位置姿勢に対象物を置くこともできるので、それでも十分であった。しかし、倉庫では、大きさや重さが異なるさまざまな物が来るし、位置や姿勢が決まっていない。同じ動作の繰り返すだけのロボットは全く機能せず、それが倉庫におけるロボット化が進まない理由でもあった。倉庫におけるロボット化は3次元ビジョンによる物体認識と位置決めが必要である。

 3次元ビジョンで物体を認識して位置決めし、その結果に基づいて対象物を把持(はじ)する。そして他との衝突を回避しながらロボットの経路を計画し、目的の場所に持って行って物体を置くという一連の動作がある。これらは目・脳・アーム・ハンドという四つの構成要素を有機的に統合した知能ピッキングロボットでなければ実現しえない。従来の産業用ロボットのティーチとプレーバック(動きの再現)はここで全く無能である。

 さらに、工場では対象物を正確な位置姿勢に置くために、正確な3次元モデルを用いることが必須である。だが、倉庫では数千ないし数十万種類の商品をピックする必要があるため、全ての物体の3次元モデルを作成しておくことが実用上困難である。Kyoto Roboticsではマスタレスの物体認識、マスタレス・ティーチングレスのピッキングロボットを開発しており、将来の方向を示している。倉庫向けの知能ピッキングロボットは、マスタレス・ティーチングレスという二つの条件を満たすものでなければ普及しないと確信する。

 倉庫向けの知能ピッキングロボットはこの1・2年で稼働する予定のものも多く、ネット通販の急成長と人手不足の深刻化から来る倉庫の自動化ニーズを満たしていく上でますます期待される分野である。(全7回、毎日掲載)
日刊工業新聞2018年6月22日(ロボット)

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