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京セラにとってAI人材の社内育成が急務のワケ

専門組織を立ち上げ
京セラにとってAI人材の社内育成が急務のワケ

5月下旬に稼働する研究拠点「みなとみらいリサーチセンター」でAI開発などを行う(入居するビル、横浜市西区)

 京セラは、データサイエンティスト(DS、分析官)の社内育成を本格化する。DSは人工知能(AI)運用の要。3年内をめどに50人程度を育て、専門組織を立ち上げる。産業界でAI利用が本格化し、即戦力となる「AI人材」の獲得競争が世界的に激化している。京セラはAIとロボットを使った生産性倍増計画に取り組んでおり、AI人材の採用難が深刻化する中、内部の人材育成が急務と判断した。

 京セラは2018年にDSの社内育成に着手。AI導入工場で研修させるなどし、「1期生」として数十人を養成した。19年度はさらに20人以上がDSの教育プログラムに参加する。将来は100人超を育成し、国内の各事業部、各工場にDSを派遣する。

 DSはビッグデータ(大量データ)を評価・分析する専門家。京セラでは現在、生産ラインのセンサーから取得したデータを、DSが利用目的ごとに集計。その後、AIに多元解析させて、因子を探る。これにより生産の遅れやラインの不具合などの原因を究明し、改善に生かしている。

 経済産業省の推計では、ビッグデータやIoT(モノのインターネット)、AIを担う先端的なIT技術を持つ国内の人材が20年には約4万8000人不足するとみられる。

 実績を持つAI人材は引き抜きの対象になりやすいこともあり、割高な給与水準を提示するなど、各社ともさまざまな人材確保策を進めている。京セラもDSの人事評価や給与体系については、従来と異なる方法を検討していく。
日刊工業新聞2019年4月19日

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