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高崎の加工メーカー、三代紡ぐ「変革の遺伝子」

「創業の連続」と「起業家精神」が原動力
高崎の加工メーカー、三代紡ぐ「変革の遺伝子」

共和産業の鈴木宏子社長。液晶・半導体分野や航空宇宙分野に経営資源を投じてきた

「高崎発」世界へ―。群馬県高崎市に本社を置きながらグローバル展開を加速する企業がある。精密機械加工メーカーの共和産業だ。

次世代車向け


 同社の主力事業は、次世代自動車部品の開発試作。これまで培ってきた技術力と実績を武器に、現在は液晶・半導体分野向けの大型部品や航空宇宙分野向けの超精密切削加工も手がける。いずれも現社長の鈴木宏子が社長に就任して以降、集中的に経営資源を投じ、拡大を図ってきた分野だ。

 特に開発試作の分野では、品質や納期をはじめあらゆるニーズへの対応力を磨き上げ、新規顧客の開拓につなげてきた。現在は国内のほとんどの自動車メーカーと取引を行っており、フォーミュラワン(F1)やインディカーといったレース向けエンジン部品の開発試作も手がけている。

製造分野に集中


 もっとも、現在の業態が定着したのはこの10年のこと。歴史を重ねる中で、生き残りをかけて幾度となく変革を繰り返してきた。

 1946年に工具の販売などを手がける商社として創業。54年に製造部門を設置してモノづくりの分野に乗り出し、60年代以降は自動車部品の量産を始めた。オイルショックが起きた時には、大量の雇用調整を実施するなど苦い思いも味わった。板金加工の技術を生かして、たばこの自動販売機やバスの料金箱など、それまで手がけていなかった製品を作り、何とか食いつないだ。

 メーカーへと変貌を遂げたのは70年代だ。商事部門を他社に譲渡し、それまでサブ扱いだった製造分野に経営資源を集中。工作機械の専用機の製造・販売や社内で作っていた量産ラインの省力化技術の外販などによって成長軌道に乗せた。

開発試作シフト



 「文系出身で何も分からず会社に入り、悪戦苦闘の連続だった」と話す鈴木は3代目。社長に就任した2001年以降、新機軸を次々と打ち出してきた。リーマン・ショック時には、それまで売り上げの多くを占めていた部門からの撤退と開発試作分野へのシフトを決断した。

 世代は変われど一貫して大切にしている経営テーマがある。「創業の連続」と「起業家精神」だ。現状に満足することなく、成長を模索する上で大きな原動力となった。

 そして今、中小企業ながらも世界で勝負できるブランド力の確立に挑んでいる。共和産業の73年の歴史は、親子3代が会社の継続と発展を追い求めてきた革新の系譜でもある。(敬称略)

▽所在地=群馬県高崎市島野町890、027・352・1631▽社長=鈴木宏子氏▽設立=46年(昭21)10月▽資本金=9600万円▽従業員=120人▽売上高=25億円(18年9月期)▽URL=www.kyowa-industrial.co.jp/

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