【連載】なぜ、企業は不祥事を繰り返すのか? ①うまくいかない不祥事対策
不祥事の「病因」を分析せよ!
警察大学校教授の樋口と申します。危機管理・リスク管理が専門分野であり、特に企業不祥事の原因メカニズムについて研究しています。その関係で、このたび日刊工業新聞社より『なぜ、企業は不祥事を繰り返すのか -有名事件13の原因メカニズムに迫る-』を上梓いたします(8月26日発売)。本連載では、拙著のご紹介を兼ねて、具体的な事例をもとに企業不祥事を予防するためのポイントについてご説明します。
日本では、2000年に雪印集団食中毒事件が発生するとともに、三菱自動車によるリコール隠蔽事件が発覚した。それ以後、安全・安心やコンプライアンスに関する企業の社会的責任が広く認知され、不祥事が発生した場合に企業側の受けるダメージも極めて重大となっている。
この情勢を受けて、不祥事の防止が経営上の重要課題に浮上し、過去10年以上にわたり様々な対策が進められた。それにもかかわらず、依然として同種の不祥事が続発しているのが現実である。不祥事の防止に向けた企業側の取り組みが、必ずしも効果を上げていないと言わざるを得ない。それでは、どうして不祥事対策が上手くいかないのだろうか。
多くの企業は、不祥事を防止するために重層的なリスク管理制度(内部統制もその一環)を整備している。それなのに不祥事が起きてしまうのは、失敗学のスイスチーズモデルが示すように、様々なリスク管理の仕組みが、何らかの「病因」によって機能不全に陥ってしまうからである。
病気を根本的に治療するには、「症状」を緩和する対症療法だけでは不十分であり、「病因」をつきとめて除去することが必要である。しかし多くの企業では、不祥事のリスク管理に失敗したという「症状」だけを問題視して、その背後にある「病因」に目を向けていない。「病因」がよく分かっていなければ、その対策が的外れになるのも当然である。
企業が実際に行っている不祥事防止対策は、「コンプライアンス意識を持って仕事して欲しい」と精神論を唱えるか、「○○対策委員会」「△△マニュアル」のようにリスク管理の制度を積み増しするなどの弥縫的な措置となりがちである。肝心の「病因」が手付かずのままでは、不祥事に対するリスク管理が再び機能不全に陥ることは避けられない。
不祥事の原因をしっかり分析して、その「病因」を理解することの重要性について異論はあるまい。それなのに、企業側が「病因」に目を向けようとしないのはどうしてだろうか。
不祥事防止は企業の社会的責任
日本では、2000年に雪印集団食中毒事件が発生するとともに、三菱自動車によるリコール隠蔽事件が発覚した。それ以後、安全・安心やコンプライアンスに関する企業の社会的責任が広く認知され、不祥事が発生した場合に企業側の受けるダメージも極めて重大となっている。
この情勢を受けて、不祥事の防止が経営上の重要課題に浮上し、過去10年以上にわたり様々な対策が進められた。それにもかかわらず、依然として同種の不祥事が続発しているのが現実である。不祥事の防止に向けた企業側の取り組みが、必ずしも効果を上げていないと言わざるを得ない。それでは、どうして不祥事対策が上手くいかないのだろうか。
多くの企業は、不祥事を防止するために重層的なリスク管理制度(内部統制もその一環)を整備している。それなのに不祥事が起きてしまうのは、失敗学のスイスチーズモデルが示すように、様々なリスク管理の仕組みが、何らかの「病因」によって機能不全に陥ってしまうからである。
不祥事には「病因」がある
病気を根本的に治療するには、「症状」を緩和する対症療法だけでは不十分であり、「病因」をつきとめて除去することが必要である。しかし多くの企業では、不祥事のリスク管理に失敗したという「症状」だけを問題視して、その背後にある「病因」に目を向けていない。「病因」がよく分かっていなければ、その対策が的外れになるのも当然である。
企業が実際に行っている不祥事防止対策は、「コンプライアンス意識を持って仕事して欲しい」と精神論を唱えるか、「○○対策委員会」「△△マニュアル」のようにリスク管理の制度を積み増しするなどの弥縫的な措置となりがちである。肝心の「病因」が手付かずのままでは、不祥事に対するリスク管理が再び機能不全に陥ることは避けられない。
不祥事の原因をしっかり分析して、その「病因」を理解することの重要性について異論はあるまい。それなのに、企業側が「病因」に目を向けようとしないのはどうしてだろうか。