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大変革期を生き抜く“京セラ流イノベーション”の方程式

執行役員上席の稲垣正祥研究開発本部長インタビュー
大変革期を生き抜く“京セラ流イノベーション”の方程式

京セラとGLMが共同開発した「スポーツEVコンセプトカー」

 京セラは外部の知見を取り入れるオープンイノベーションを積極的に進める。同社の主戦市場は今、激動の真っただ中。自動車は電動化の進展など100年に1度の大変革期。情報通信は第5世代通信(5G)の商用化が目前。太陽光パネルは売電価格が低下している。この荒波を乗り越えるには個社の技術だけでは難しい。執行役員上席の稲垣正祥研究開発本部長に京セラ流イノベーションを聞いた。

―京セラの技術力をどう捉えていますか。
「例えると別々の料理を一つにした『幕の内弁当』だ。当社は多様な事業を持ち、それぞれの分野で優れた技術力がある」

―今、開発現場で起こっている変化は。
「当社の重点領域は車載、情報通信、エネルギー、医療・ヘルスケアの四つ。しかし、それぞれが独立しているわけではない。車載の切り口でも他の三つとの関連は濃い。例えば、互いに近接し合う5Gと自動運転。5Gの研究が社会の“モビリティシステム”を考える上で重要な位置を占める。ただ、これからは自社だけで何かやることは不可能になる。まずは当社の持つ技術と外部の知見を足す必要がある」

―スタートアップを創出するソニーのプロジェクトに参画しました。
「BツーC(対消費者)ならではのデザインや世界観は、BツーB(企業間)が主の当社にはない。スピード感も全然違う。今後、面白い一般消費者向け製品ができそうだと期待している」

―電気自動車ベンチャーのGLM(京都市伏見区)とは共同でコンセプトカーを開発しました。
「車の製作だけでなく、人間的な面でも交流できたことが良かった。違う考え方を持つ企業と一緒に取り組むと開発が活性化する」

―イノベーションの“方程式”があるようですね。
「『幕の内弁当』に『オープンイノベーション』を足し合わせた上で、『固い絆』を掛けると“京セラ流イノベーション”が生まれる。単に技術を寄せ合うのではない。人同士のつながりが重要だ。どの企業もオープンイノベーションはやっている。そのなかで京セラと組むと楽しい、という形を目指したい」

京セラ執行役員上席・稲垣正祥氏

【チェックポイント/異業種交流推進 横浜で拠点稼働】
京セラはオープンイノベーションの“場”づくりも進めている。5月下旬には新しい主要研究開発拠点「みなとみらいリサーチセンター」(横浜市西区)が稼働する予定だ。そこには社内外の人が活発に交流できる「共創スペース」を設置する。稲垣本部長は同拠点を「新大陸を目指して出航する船」と見立て、海と港の街・横浜に置くコンセプトとしている。事業環境の複雑化は、異業種・異分野と出会うチャンスとも言える。
(文=日下宗大)
日刊工業新聞2019年2月26日

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