5000人が同時接続!VRイベント空間が音楽ライブを変える?!
元・引きこもりの社長が目指す、世界中の人の集まる音楽ライブ
クラスター(東京都品川区、加藤直人社長)は、最大5000人が同時接続できる仮想現実(VR)イベント空間を、音楽ライブ向けに本格展開する。動画共有サイト「ユーチューブ」の配信で人気のあるバーチャルのキャラクター(Vチューバー)などへ利用を訴求する。これまでオンライン上になかった“熱狂感”を生み出し、VR体験の幅を広げる。
クラスターは独自のVRイベント空間サービスに、2018年夏にイベント主催者が有料チケットを販売できる機能を追加した。人気Vチューバーの輝夜月(カグヤ・ルナ)が開いた世界初の商業VRライブに採用され、チケットは10分で完売した。この盛況を受け、19年からイベント開催のコンサルティングも含めて音楽ライブ向けビジネスに力を注ぐ。17年のサービス開始時は企業の納会やエンジニアの勉強会などに使われていた。
同サービスはVR空間の利用のみは無料。クラスターはイベント開催のコンサル料のほか、有料チケットの販売や来場者が出演者にオンライン上で送る“ギフト”の販売で手数料を受け取る。このVR空間は、大量のデバイスを接続できるIoT(モノのインターネット)の通信技術を活用することで、最大5000人の同時接続を可能にした。VRイベントへの来場者は、同社が用意した箱形アバターをベースに好きなイラストを顔に選ぶほか、自分で立体的なアバターを作成することもできる。
VRを使えば、自宅にいながら、テレビなどの2次元映像よりも臨場感のある音楽ライブを楽しめる。世界中に人たちが参加できる。また、現実のライブと比べて、会場代などのコストを下げられる上、イベント会場を壊すといった現実では不可能な演出もできる。
17年は数十体だったVチューバーは18年には5500体以上に急増しており、VRイベントの拡大につながると見ている。このほか、ゲーム空間の中でeスポーツ観戦を行えるほか、本物のアイドルやアーティストにも新しいライブ演出の手法として提案したい考え。
「VR空間は音楽ライブのような“ハレ”体験と相性がいいと思う」と、加藤社長は話す。これまで家で音楽ライブを楽しむ方法は、テレビやパソコン画面を見ることだった。当然、部屋の中にある他の物も見えて、日常生活に引き戻されるため、音楽ライブの良さである没入感は味わえない。「いろいろなものをインターネット上で手に入れられるようになったが、“熱狂感”だけはなかった」(加藤社長)。VRヘッドセットを初めて見た時、これなら熱狂感を生み出せると思い、会社を設立したという。
会社設立を決めた当時、加藤社長は引きこもり生活を送っていた。その理由は、満員電車で移動するような非合理的な事はしたくないというもの。だが、散歩は好きで、人と話すのも嫌いじゃない。引きこもりしている期間も家からはしょっちゅう出ていた。「引きこもりだからといって、バイタリティーがないわけではない」(同)。そういった価値観だったからこそ、家にいながら大人数が集まれる空間というアイデアにつながったのかもしれない。
「学校などでは誰もが同じ尺度で評価される。多様性をあまり認めない。そんな時は、行かない方が合理的ということもある」(同)と話す。
16年にデバイスの一般販売が始まったVRは、まだ普及の途上にある。映画館やアトラクション施設での利用のほか、最近では匂いや振動によって没入感を高める技術などVR体験を広げる提案が増えている。多様な価値観がVRの世界を広げていきそうだ。
チケットが10分で完売
クラスターは独自のVRイベント空間サービスに、2018年夏にイベント主催者が有料チケットを販売できる機能を追加した。人気Vチューバーの輝夜月(カグヤ・ルナ)が開いた世界初の商業VRライブに採用され、チケットは10分で完売した。この盛況を受け、19年からイベント開催のコンサルティングも含めて音楽ライブ向けビジネスに力を注ぐ。17年のサービス開始時は企業の納会やエンジニアの勉強会などに使われていた。
同サービスはVR空間の利用のみは無料。クラスターはイベント開催のコンサル料のほか、有料チケットの販売や来場者が出演者にオンライン上で送る“ギフト”の販売で手数料を受け取る。このVR空間は、大量のデバイスを接続できるIoT(モノのインターネット)の通信技術を活用することで、最大5000人の同時接続を可能にした。VRイベントへの来場者は、同社が用意した箱形アバターをベースに好きなイラストを顔に選ぶほか、自分で立体的なアバターを作成することもできる。
VRを使えば、自宅にいながら、テレビなどの2次元映像よりも臨場感のある音楽ライブを楽しめる。世界中に人たちが参加できる。また、現実のライブと比べて、会場代などのコストを下げられる上、イベント会場を壊すといった現実では不可能な演出もできる。
17年は数十体だったVチューバーは18年には5500体以上に急増しており、VRイベントの拡大につながると見ている。このほか、ゲーム空間の中でeスポーツ観戦を行えるほか、本物のアイドルやアーティストにも新しいライブ演出の手法として提案したい考え。
アクティブな引きこもり?!
「VR空間は音楽ライブのような“ハレ”体験と相性がいいと思う」と、加藤社長は話す。これまで家で音楽ライブを楽しむ方法は、テレビやパソコン画面を見ることだった。当然、部屋の中にある他の物も見えて、日常生活に引き戻されるため、音楽ライブの良さである没入感は味わえない。「いろいろなものをインターネット上で手に入れられるようになったが、“熱狂感”だけはなかった」(加藤社長)。VRヘッドセットを初めて見た時、これなら熱狂感を生み出せると思い、会社を設立したという。
会社設立を決めた当時、加藤社長は引きこもり生活を送っていた。その理由は、満員電車で移動するような非合理的な事はしたくないというもの。だが、散歩は好きで、人と話すのも嫌いじゃない。引きこもりしている期間も家からはしょっちゅう出ていた。「引きこもりだからといって、バイタリティーがないわけではない」(同)。そういった価値観だったからこそ、家にいながら大人数が集まれる空間というアイデアにつながったのかもしれない。
「学校などでは誰もが同じ尺度で評価される。多様性をあまり認めない。そんな時は、行かない方が合理的ということもある」(同)と話す。
16年にデバイスの一般販売が始まったVRは、まだ普及の途上にある。映画館やアトラクション施設での利用のほか、最近では匂いや振動によって没入感を高める技術などVR体験を広げる提案が増えている。多様な価値観がVRの世界を広げていきそうだ。
日刊工業新聞2019年2月20日掲載から加筆