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染色会社の生地保管、社内に切り替えの裏にある中国の事情

東海染工が2020年3月期に開始
染色会社の生地保管、社内に切り替えの裏にある中国の事情

工場内で一部の生地を保管しているが基本は外注している(浜松事業所の保管スペース)

 東海染工は、ほぼ全量外注している染色加工前後の生地の保管業務について、2020年3月期に社内への切り替えを始める。2億―3億円を投じて岐阜県羽島市と浜松市東区にある工場に倉庫を新設する。原材料費や物流費の上昇などコストアップ要因が増す中、2工場合わせて物流費含め月間約2700万円かかり今後、上がる見通しの保管料を低減する。

 染色加工の拠点である、岐阜事業所と浜松事業所の敷地内に生地保管用倉庫を設ける。浜松事業所では工場内スペースで、即加工しない一部の染色前の生地の保管はしていたが岐阜事業所を含め基本的には外部委託している。新設する倉庫の規模は現在検討中で、それにより社内に切り替える比率を詰める。

 東海染工はアパレル生地などの染色加工が主力。中国メーカーの生産減を背景に染料価格が高騰している。例えば青色のスレン染料の価格は18年の同時期に比べ2・5倍に跳ね上がっているという。物流費などの上昇もあり、コスト低減が急務となっている。

 18年には染色加工の助剤として使用しているカセイソーダの値上がり対策として、岐阜事業所と浜松事業所で、その再利用も始めている。同社の19年3月期の連結営業利益は9億円(前期比0・8%増)の見通し。
日刊工業新聞2019年2月19日
峯岸研一
峯岸研一 Minegishi Kenichi フリーランス
染色業界の保管管理は、大まかに海外と国内、国内でも長繊維と短繊維業界とで様々な点で異なります。中国を中心とした海外は、染色企業が生機(染色加工前)と製品(染色加工後)の何れも原則として保管管理しません。一方、国内では、長繊維染色業界は大手染色企業が自ら大規模な保管管理倉庫を保有しているのが一般的。しかも、保管生機の管理経費を請求する動きも見られます。また、製品は加工完了後(検反後)に染色加工料金を速やかに請求(加工完了請求)するため、染色企業が長期に保管管理することは多くありません。これに対し短繊維染色業界は、製品を全量出荷した時点(出荷完了請求)で請求することが多く、製品を自らの負担で長期に保管管理することが珍しくありません。保管管理問題は染色業界が掲げる取引条件改善の重要テーマでもあります。少なくとも、染色業界が多くを自らの負担で生機、さらに製品を保管管理する現状はグローバルスタンダードではありません。現在、国内の繊維サプライチェーン再構築の必要性が指摘されています。そのためには特定の段階にしわ寄せする取引慣行を改善することが不可欠です。

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