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米国の農畜産業界が悲鳴をあげている

日本を取り巻くメガFTAの発効が相次ぎ、農畜産品の輸出不利が濃厚に
 日本をとりまくメガ自由貿易協定(FTA)が次々と発効し、環太平洋連携協定(TPP)から脱退した米国農畜産品の輸出不利が濃厚となってきた。米国乳製品輸出協会は、米国を除く11カ国によるTPP(TPP11)や日本と欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)などの発効によって、米国の乳製品の対日輸出は、今後10年間で13億ドル(約1400億円)のマイナス影響を受けるとした試算をまとめた。牛肉でも競合相手である豪州に加え、TPP11参加国であるニュージーランドやカナダが米国産と関税面で比較優位に立つことになり、米国農畜産業界の対日輸出は厳しい局面に立たされている。

大きな不利益


 米国乳製品輸出協会の試算は、22年以降、急速に対日輸出が減速すると予測。日EU・EPAでは、現在おおむね30―40%あるチーズの関税は16年かけて段階的に引き下げられ、品目によっては撤廃されるものもある。これにTPPも合わさり、日本市場でのシェアが高いEU産やニュージーランド産の競争力が高まっていく。このままの状況が続けば米国産は長期的に大きな不利益を被る。

 牛肉でも米国産の置かれた状況は厳しくなる。日本の牛肉の関税は、世界貿易機関(WTO)の最恵国待遇の原則で、税率は38・5%。FTAを結ばない限り原則のこの税率が課され、TPPから脱退した米国の牛肉には、FTA締結国よりも高い関税が上乗せされている。

牛肉の関税差


              

 一方、豪州やニュージーランド、カナダ産の牛肉は、TPP11により、16年かけて9%まで関税が引き下げられる。現在は発効1年目で、27・5%の関税率まで引き下げられており、米国産との税率の差は10%以上ある。15年に日豪EPAが発効している豪州にとっても、長期的にはTPP11によって、より高い割合で関税が引き下げられる。

 米国にとって日本は主要輸出先だ。米国食肉輸出連合会の資料では、17年の牛肉輸出の国別割合で日本が24%を占め、国別で最大。日本の農畜産業振興機構によれば、17年の日本の牛肉輸入量は約57万トン。そのうち約23万トンが米国産、約30万トンが豪州産で、米国にとって豪州産の牛肉は最も強力な競合相手となっている。

焦りの色隠せず


 18年12月に米国通商代表部(USTR)が開いた日本と米国との物品貿易協定(TAG)の公聴会でも米国食肉輸出連合会は「このままでは対日輸出が大きく減少する」として、米国産の食肉に課している日本側の関税の「早急な引き下げが不可欠」だと要求。

 米国乳製品輸出協会もTPP、日EU・EPAを上回る水準の開放を求め、日本をとりまくメガFTA発効を前に焦りを見せていた。

 米農畜産業界の予想するマイナス影響は現実になり、その影響の大きさもこの先膨らんでいく。今後始まる日米のTAG交渉で、米農畜産業界が日本市場の開放を求めるのは必至だ。
日刊工業新聞2019年2月8日

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