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パルス幅100ピコ秒でレーザー出力する回路はどこがすごいのか

トリマティスが製品化。金属精密加工の限界を超えるイノベーション
 トリマティス(千葉県市川市)は、パルス幅100ピコ秒(ピコは1兆分の1)のレーザー出力を実現する駆動制御回路を開発した。ピコ秒単位のパルス発生で必要な周辺機器を不要にし、小型・低コスト化を実現する。同回路を用いてレーザー加工機を構成すると、数十マイクロメートル(マイクロは100万分の1)レベルでの金属精密微細加工が可能となる。レーザーと電源を組み合わせた光源ユニットとして9月に発売する。価格は約40万円(消費税抜き)で、年間100台の販売を見込む。

 島津製作所の外部共振器型短パルス半導体レーザー「ビームインパクト」向けに開発した。回路方式やプリント基板を改良し、レーザーダイオード(LD)直接駆動で、100ピコ秒の超短パルスと光のピークパワー200ミリワットの高パワーを両立した。通常、レーザーダイオードに入力する電流を大きくするとパルス幅が広がるが、電流を最大限流しパワーを確保しながら、パルス幅を抑えた。

 また、直接駆動で周辺機器が不要なため、小型化、コストダウンを実現。これまでピコ秒単位のパルス発生は、外部変調法やモード同期法が一般的で、変調器や光学デバイスが必要だった。

 光源ユニットのサイズは80ミリ×70ミリ×40ミリメートル。ファイバーレーザー用シード光として、半導体ウエハー加工など微細な切断やエッチング、3Dプリンティングに用いる。パルス幅数ナノ秒の場合に比べ、加工時の熱の影響を低減でき、バリの発生を抑えられる。また、波長が安定し分解能も高いことから、基準光源として分析機器での利用も提案する。
日刊工業新聞2015年07月31日 機械・ロボット・航空機面
加藤百合子
加藤百合子 Kato Yuriko エムスクエア・ラボ 代表
高精度化の限界まで至っているのではと思っていましたが、まだまだ技術革新で壁を超える技術があると思い知らされました。やっかいなバリの発生も抑えられ、製造現場への導入により、イノベーションを誘導するようになることを期待したいです。

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