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廃止から20年…定期航路復活のカギは“サイクル・ツーリズム”

大阪・深日港から兵庫・洲本港へ、旅客船の社会実験はサイクリストから好評だった
廃止から20年…定期航路復活のカギは“サイクル・ツーリズム”

深日港と洲本港を結ぶ旅客船「深日洲本ライナー」に乗るサイクリストら(岬町提供)

 大阪府岬町の深日(ふけ)港と兵庫県洲本市の洲本港を結ぶ定期航路の復活に向け、岬町と洲本市が旅客船を運航する社会実験を進めている。2017年度の社会実験運航がサイクリストの間で人気となり、18年度はサイクル・ツーリズムを前面に打ち出した社会実験として運航を再開した。航路の廃止から来年で20年。悲願の実現へ模索が続く。

深日−洲本港、リピート客確保が課題


 深日港と洲本港を結ぶ航路は、明石海峡大橋の開通や関西国際空港開港の影響を受け、99年に廃止。深日港はかつて海の玄関口として栄え、周辺の商店街もにぎわったが、航路の廃止後は急速に寂れたという。

 岬町は航路復活への機運を高めようと、12年から毎年夏に「深日港フェスティバル」を開催。16年には岬町や洲本市をはじめ地元自治体などで構成する「深日港洲本港航路に関する連携協議会」が発足し、航路の可能性について検討している。

 17年度の社会実験は国土交通省の「船旅活性化モデル地区」を活用し、同年6月から約3カ月実施した。恭兵船舶(大阪府岸和田市)の協力を得て、68人乗りの双胴船(49トン)を1日4往復運航。乗船料金は大人片道1500円と設定した。

 乗船客は1便当たり平均13・94人、休日に限ると平均21・15人。乗船目的は観光が最も多く、帰省が続いた。サイクリングが14%を占めたのは想定外で、「(社会実験の結果に)手応えがあった」と岬町まちづくり戦略室の担当者は振り返る。

 18年度は「大阪湾をつなぐ!広域型サイクル・ツーリズム事業」と銘打ち、岬町と洲本市が7月から8カ月の社会実験を続けている。両港を結ぶ航路が、神戸や阪神間を経由しない「大阪湾南回りルート」となり、サイクリストの行動範囲も広がるとみて、サイクル・ツーリズムを前面に打ち出した。船内には自転車31台分の固定台を整備した。

 11月末までの乗船客は1便当たり平均9・1人、休日は平均14・7人。台風や猛暑などの影響で昨年度より少ないものの、自転車を載せた乗船客の割合は14・7%と依然として堅調だ。

 ただ、サイクリストの一定の需要が定期航路復活に直結しないのが苦しいところ。同じ航路を頻繁に利用するリピーターがサイクリストには少ないからだ。これについて洲本市企画課の担当者は「他のターゲットをしっかりつかまえないといけない」と新たな需要開拓の必要性を指摘する。定期航路の復活には、社会実験を踏まえた“次の一手”が求められそうだ。
(文=南大阪・村田光矢)
日刊工業新聞2018年12月14日

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