三菱ケミカルHD、早くも20年度計画の最終利益を上方修正したワケ
三菱ケミカルホールディングスは4日、現中期経営計画(2016―20年度)の業績目標を上方修正した。コア営業利益(非経常的な損益を除いた営業利益)は当初予想比300億円増の4100億円、当期利益を同400億円増の2200億円に上積みした。
同社の越智仁社長(写真)は同日の事業説明会で「MMA(メタクリル酸メチル)の市況などを考慮しながら、機能商品の自力成長と3社統合効果、産業ガスの大型買収で新たな目標を達成する」と語った。株主資本利益率(ROE)は同1ポイント増の13%を目指す。大陽日酸の大型買収で悪化するネットD/Eレシオは当初計画の0・8倍から1・0倍に見直した。
ただ、17年末の説明会では20年度にコア営業利益4300億円を目指す方針を示していた。越智社長は「田辺三菱製薬などヘルスケア部門の計画未達分で下げたが、(産業ガスの上積み以外は)当初のもくろみとほぼ変わっていない」と強調した。
ポートフォリオ改革について18年度までに売上高1000億円規模の事業撤退・売却を実施。関係会社も111社を削減した。
(日刊工業新聞2018年7月6日掲載)
※内容、肩書きは当時のもの
大陽日酸は5日、同業の米プラクスエアが欧州で展開する産業ガスや炭酸ガス、ヘリウム事業の一部を買収すると発表した。取得額は50億ユーロ(約6438億円)で、大陽日酸の買収案件としては過去最高額。これにより、大陽日酸は北米に次ぐ成長が見込める欧州市場に参入を果たす。プラクスエアは産業ガス世界3位で、2018年内に同2位の独リンデと経営統合を計画している。ただ、事業規模が大きく各国が競争法への抵触を調査中で、欧州委員会は欧州事業の譲渡を求めていた。
大陽日酸の市原裕史郎社長は2社の合併決定に際し、かねて「知識も経験もある領域で経営する自信もある」と明言。売却資産があれば買収する意向を示していた。
16年には米エアガスを買収した仏エア・リキードから米国の一部事業を買収。北米では海外の競合と同等の生産能力と市場シェアを手に入れた。このため今回は同じく売却予定の米国事業の買収は難しく、欧州への参入を優先した。
大陽日酸にとって、欧州市場は特別だ。産業ガス世界1位の仏エア・リキードや同2位の独リンデのお膝元だ。プラクスエアやエア・プロダクツなど米国勢を含む“海外メジャー”と鉄鋼や化学などの地元企業との結びつきは強く、そう簡単には手を出せない領域だった。買収による欧州進出で、アジア発の“メジャー”を志向してきた大陽日酸の存在感は一気に高まる。
今回の買収対象はプラクスエアが欧州13カ国で展開する産業ガスや炭酸ガス、ヘリウム事業だ。2018年中の経営統合を予定するリンデとプラクスエアが、独禁法に絡み欧州委員会から求められた事業譲渡の一環。いずれも工場や販売網、顧客基盤が構築済みで、高い収益性が確約されている。大陽日酸にしてみればこれ以上ない魅力的な案件で、事業拡大のめったにない好機だった。
そもそも日本国内では、急速に進んだ製造業各社の海外移転を背景に産業ガス市場は拡大が見込めない。大陽日酸はアジアや米国での合弁設立やM&A(合併・買収)を推し進め、新たな収益の柱に育ててきた。主な対象は空気分離装置(ASU)のような生産設備を構える同業と、これらメーカーや化学工場から各種ガスを仕入れてボンベに充填・供給する地域の販売会社だ。
16年には米エアガスを買収したエア・リキードから米国の一部事業を買収。世界最大の市場規模を持つ北米で、事業規模の拡大を果たした。大陽日酸の現時点の世界シェアは約6%で、世界5位。今回の買収により、ほぼ無名に近い欧州での競争力が底上げされる。計約80%の世界シェアを誇る海外メジャー3社には遠く及ばないが、その名を知らしめるには十分。さらなる成長も視野に入る。
同社の越智仁社長(写真)は同日の事業説明会で「MMA(メタクリル酸メチル)の市況などを考慮しながら、機能商品の自力成長と3社統合効果、産業ガスの大型買収で新たな目標を達成する」と語った。株主資本利益率(ROE)は同1ポイント増の13%を目指す。大陽日酸の大型買収で悪化するネットD/Eレシオは当初計画の0・8倍から1・0倍に見直した。
ただ、17年末の説明会では20年度にコア営業利益4300億円を目指す方針を示していた。越智社長は「田辺三菱製薬などヘルスケア部門の計画未達分で下げたが、(産業ガスの上積み以外は)当初のもくろみとほぼ変わっていない」と強調した。
ポートフォリオ改革について18年度までに売上高1000億円規模の事業撤退・売却を実施。関係会社も111社を削減した。
大陽日酸、6400億円M&Aで欧州参入
(日刊工業新聞2018年7月6日掲載)
※内容、肩書きは当時のもの
大陽日酸は5日、同業の米プラクスエアが欧州で展開する産業ガスや炭酸ガス、ヘリウム事業の一部を買収すると発表した。取得額は50億ユーロ(約6438億円)で、大陽日酸の買収案件としては過去最高額。これにより、大陽日酸は北米に次ぐ成長が見込める欧州市場に参入を果たす。プラクスエアは産業ガス世界3位で、2018年内に同2位の独リンデと経営統合を計画している。ただ、事業規模が大きく各国が競争法への抵触を調査中で、欧州委員会は欧州事業の譲渡を求めていた。
大陽日酸の市原裕史郎社長は2社の合併決定に際し、かねて「知識も経験もある領域で経営する自信もある」と明言。売却資産があれば買収する意向を示していた。
16年には米エアガスを買収した仏エア・リキードから米国の一部事業を買収。北米では海外の競合と同等の生産能力と市場シェアを手に入れた。このため今回は同じく売却予定の米国事業の買収は難しく、欧州への参入を優先した。
アジア発メジャー狙い、世界1位、2位のお膝元へ
大陽日酸にとって、欧州市場は特別だ。産業ガス世界1位の仏エア・リキードや同2位の独リンデのお膝元だ。プラクスエアやエア・プロダクツなど米国勢を含む“海外メジャー”と鉄鋼や化学などの地元企業との結びつきは強く、そう簡単には手を出せない領域だった。買収による欧州進出で、アジア発の“メジャー”を志向してきた大陽日酸の存在感は一気に高まる。
今回の買収対象はプラクスエアが欧州13カ国で展開する産業ガスや炭酸ガス、ヘリウム事業だ。2018年中の経営統合を予定するリンデとプラクスエアが、独禁法に絡み欧州委員会から求められた事業譲渡の一環。いずれも工場や販売網、顧客基盤が構築済みで、高い収益性が確約されている。大陽日酸にしてみればこれ以上ない魅力的な案件で、事業拡大のめったにない好機だった。
そもそも日本国内では、急速に進んだ製造業各社の海外移転を背景に産業ガス市場は拡大が見込めない。大陽日酸はアジアや米国での合弁設立やM&A(合併・買収)を推し進め、新たな収益の柱に育ててきた。主な対象は空気分離装置(ASU)のような生産設備を構える同業と、これらメーカーや化学工場から各種ガスを仕入れてボンベに充填・供給する地域の販売会社だ。
16年には米エアガスを買収したエア・リキードから米国の一部事業を買収。世界最大の市場規模を持つ北米で、事業規模の拡大を果たした。大陽日酸の現時点の世界シェアは約6%で、世界5位。今回の買収により、ほぼ無名に近い欧州での競争力が底上げされる。計約80%の世界シェアを誇る海外メジャー3社には遠く及ばないが、その名を知らしめるには十分。さらなる成長も視野に入る。
日刊工業新聞2018年12月5日